ろれさんの一条工務店攻略日記

大和ハウスが注文住宅を5,000万円以上に絞った本当の理由|縮小する市場でハウスメーカーをどう選ぶか

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2026年9月3日、大和ハウス工業が新築戸建住宅事業の再編を発表しました。「注文住宅は5,000万円以上に限定」「23道県から撤退」という見出しが並び、SNSでもかなり話題になっています。

これから家を建てる人からすると、なかなか穏やかではない話ですよね。大手が地方から引き揚げるということは、この先ハウスメーカーはどうなっていくのか。すでに契約した会社は大丈夫なのか。

公式リリースの原文と、着工統計・金利・倒産件数といった一次情報を一通り確認しました。結論から言うと、報道の見出しから受ける印象と、実際に発表されている内容にはいくつかズレがあります。そして「これから選ぶ人が本当に確認すべきこと」は、会社の大きさとは少し違うところにありました。

この記事の内容は動画でも解説しています(クリックで再生)

結論:3つのポイント

論点事実
今回の発表は何か新築の展開エリアと価格帯の絞り込み。既存オーナーのアフターサービスは全国で継続
なぜ起きたか業績不振ではない。増収増益の中での戦略転換
これから選ぶ人は会社の規模より、契約書と保証書の条件を自分で確認するほうが確実

大和ハウスが発表したこと

大和ハウスが2026年9月3日に発表した内容の一覧表。新築のエリアは都市圏中心の14支社・支店/23エリアに集約、新築の価格帯は注文住宅5,000万円以上に限定(報道)、高価格帯は1億円超を年間約200戸から倍増させる方針(報道)、アフターサービスは既存オーナー向けは引き続き全国で提供、実施時期は組織・事業体制の変更が2027年4月1日付

公式リリースのタイトルは「国内住宅事業の成長加速に向けた事業体制の再編・強化について」です。組織変更は2027年4月1日付。

ここで一つ、報道と公式リリースで数字の意味が食い違っている点があります。

報道では「23道県から撤退」と伝えられていますが、公式リリースにこの表現はありません。原文にあるのは次の一文です。

需要が堅調な都市圏を中心に14支社・支店に営業・設計・施工体制などの経営資源を重点配置し、23エリアで事業を展開します

公式の「23」は、撤退する数ではなく事業を続ける側のエリア数です。同じ23という数字が正反対の意味で流通しているので、ここは分けて読む必要があります。なお撤退する都道府県名の一覧は、公式リリースにも報道にも出ていません(エリアは地図画像で示されているだけです)。石川県と富山県が対象であることが地元紙で確認できる程度です。

価格の話も公式リリースには書かれていません。「5,000万円以上に限る」「1億円超を約200戸から倍増」は日経など複数社が報じている内容で、会社への取材で出た数字とみられます。デマの類ではありませんが、会社が文書で出したものではないので、公式リリースの記載とは分けて押さえておくと確実です。なお土地代を含む金額なのかどうかは、原文を確認できませんでした。

すでに建てた人のアフターサービスは続く

一番気になるところだと思いますが、公式リリースにはっきり書いてあります。

なお、既存のオーナー様へのアフターサービスについては、大和ハウスパートナーズ株式会社が引き続き全国で提供していきます

大和ハウスパートナーズは今回新しく作られる会社で、戸建住宅のストック事業と既存オーナー向けアフターサービス部門を集約します。むしろ住宅ストック事業のほうは「全国47都道府県の拠点で」と、エリアを広げる方向です。

撤退という言葉のインパクトが強いのですが、対象は新築の受注であって、すでに引き渡した家の面倒を見る体制ではありません。

「エリア撤退」と「会社が消える」は別の話

エリア撤退と倒産の違いを比較した図。エリア撤退(今回の発表)は会社が存続し撤退するのはその地域での新築の受注だけで、既存オーナーの10年保証・独自の長期保証・点検アフターはすべて継続。倒産(今回とは別の話)は会社そのものが無くなり契約の相手がいなくなり、10年以内の構造・雨漏りは保険で守られるが独自の長期保証と点検アフターは消える

今回のニュースで不安になった方は、この2つを分けて考えると整理しやすいと思います。

エリア撤退は、会社が存続したまま特定地域での新築営業をやめることです。契約の相手は残るので、保証も点検も続きます。

倒産は、契約の相手そのものがいなくなることです。このときだけ、保証がどうなるかという話が発生します。

今回の大和ハウスの発表は前者です。後者の心配をする材料にはなりません。

そもそも業績不振ではない

「大手が撤退するくらいだから経営が厳しいのだろう」と読んだ方もいると思いますが、決算を見るとそうではありませんでした。

2026年3月期の連結決算は次のとおりです。

項目金額前期比
売上高5兆5,768億円+2.6%
営業利益6,148億円+12.6%
経常利益5,719億円+10.9%
当期純利益3,505億円+7.8%
戸建住宅事業 売上高1兆3,422億円+17.3%
戸建住宅事業 営業利益1,556億円+123.0%

全社で増収増益、戸建セグメントに至っては営業利益が2倍を超えています(この営業利益には退職給付数理差異等償却益1,156億円が含まれるので、その分は割り引いて見る必要があります)。

一方で国内の販売戸数は4,867戸にとどまり、セグメントの成長は米国事業が牽引していました。国内の戸建は数が伸びない。だったら数を追わずに単価の高いところへ寄せる、という判断だと読めます。追い込まれた撤退ではなく、選んだ撤退です。

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市場に起きている4つの変化

大和ハウスが公式リリースで挙げた背景は「人口減少や建築資材価格の高騰などを背景に、新設住宅着工戸数は長期的な減少傾向にあり、市場環境は大きな転換期を迎えています」というものでした。この認識が数字と合っているか確認してみます。

注文住宅の市場に起きている4つの変化。持家の着工戸数は2025年20.1万戸で直近10年で最多の2016年29.2万戸から31.1%減・4年連続の減少、木造住宅の工事費は2025年度で2020年度比22.3%増・2015年度比30.8%増、日銀の政策金利は2026年6月に1.0%へ0.75%から引き上げでフラット35は年3.46%、建設業の倒産は2025年2,021件で4年連続増・12年ぶりに2,000件超

数量は減り、単価は上がり、金利も上がっている。事業として見たときに、地方で数をこなすモデルが苦しくなっているのは確かにそのとおりでした。

持家の着工は10年で約3割減った

持家の新設住宅着工戸数の推移グラフ。2015年28.3万戸、2016年に直近10年で最多の29.2万戸、2019年28.9万戸、2021年28.6万戸、2022年25.3万戸、2023年22.4万戸、2024年21.8万戸、2025年20.1万戸と減少。2016年から31.1%減

持家(注文住宅にあたる区分)の着工戸数は、直近10年で最も多かった2016年の29.2万戸から、2025年は20.1万戸まで減りました。31.1%減、4年連続の減少です。もっと長い目で見ると落ち込みはさらに大きく、統計上の最多は1973年の76.5万戸なので、そこからは4分の1近くまで減った計算になります。新設住宅全体(2016年比23.4%減)よりも、注文住宅の減り方のほうが大きくなっています。

一点補足しておくと、2026年に入ってからの月次は前年同月比でプラスの月が目立ちます。4月は19.5%増、5月は31.8%増、6月は15.7%増でした。ただしこれは水準が戻ったという話ではありません。比較対象の2025年4〜6月が大きく落ち込んでいた反動で、たとえば2026年5月の15,708戸は2024年5月の17,238戸にまだ届いていません。長期の減少トレンドとは分けて見たほうがいいところですが、「今まさに急減している」という状況でもない、というのが実際です。

工事費は2割以上上がった

国土交通省の建設工事費デフレーターで木造住宅を見ると、2025年度(暫定値)は2020年度比で22.3%上昇。2015年度と比べると30.8%上がっています。直近の2026年6月も前年同月比で4.5%上昇していて、まだ止まっていません。

この指数が追っているのは、資材費と労務費という工事の原価です。ハウスメーカーの利益も消費税も土地代も含まないので、施主が実際に払う金額とは別物です。

実際の支払額のほうを見ると、上がり方はもっと大きくなります。住宅金融支援機構のフラット35利用者調査(注文住宅・全国)で建設費を住宅面積で割ると、1平方メートルあたり2015年度の24.9万円から2025年度は36.0万円へ、44.3%上がった計算になります。坪単価にすると約82万円から約119万円です。

総額が同じくらいの伸びに見えるのは、建てる家が小さくなっているからです。同じ調査で住宅面積は129.4平方メートルから118.4平方メートルへ8.5%縮んでいます。予算に合わせて面積を削って調整している、という姿が数字に出ています。

金利は上がった

日本銀行は2026年6月16日、無担保コールレートの誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました(賛成7・反対1)。理由として「消費者物価の基調的な上昇率が2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがある」ことを挙げています。

フラット35の最頻金利は、借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下で年3.460%です。

住宅ローン控除は「廃止」ではありません

金利の話とセットで「住宅ローン控除も2030年でなくなる」と聞いたことがある方がいるかもしれませんが、これは逆です。

令和8年度税制改正で、入居期限が令和12年(2030年)12月31日まで5年延長されました。2030年末は廃止の年ではなく、延長された後の期限です。あわせて床面積要件が新築・既存とも40平方メートル以上に緩和され、子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額の上乗せも拡充されています。ただし40平方メートル台を狙う場合は注意が必要で、合計所得金額1,000万円超の人と、子育て世帯等の上乗せ措置を使う人は50平方メートル以上が条件のままです。

ただし性能の条件は厳しくなる方向です。国土交通省の資料には「建築確認が令和10年以降の省エネ基準適合住宅は適用対象外(登記簿上の建築日が令和10年6月30日までは適用対象)」とあります。省エネ基準に適合していれば通る、という段階が終わるという意味で、これから先はZEH水準以上が前提になっていきます。今から計画する人は、ここを見込んで性能を決めておきたいところです。

倒産は増えている。ただし中身を見る

建設業の倒産件数の棒グラフと規模の内訳。倒産件数は2021年1,065件、2023年1,883件、2024年1,890件、2025年2,021件と4年連続で増加し12年ぶりに2,000件を超えた。2025年に倒産した会社の91.4%が従業員10人未満で、内訳は1〜4人が74.3%、5〜9人が17.1%

建設業の倒産は2025年に2,021件で、4年連続の増加。2013年以来12年ぶりに2,000件を超えました(帝国データバンク調べ)。2021年の1,065件が底だったので、4年でほぼ倍になっています。2026年に入ってからも増加は続いていて、上半期は前年同期比5.8%増でした(ただし2025年通年の増加率6.9%と比べると、増えるペース自体はやや落ち着いています)。

ハウスメーカー・工務店に一番近い「木造建築工事業」で見ると、2026年1〜7月で159件(前年同期比20.5%増)。7月にはアエラホームが民事再生法を申請しました。

ここまでだと不安になる数字ですが、内訳を見ると印象が変わります。東京商工リサーチの集計では、2025年に倒産した建設業者の91.4%が従業員10人未満でした。内訳は1〜4人が74.3%、5〜9人が17.1%です。淘汰が進んでいるのは主に小規模事業者であって、大手が次々に倒れているわけではありません。

倒産件数より深刻かもしれないのが、担い手のほうです。大工の人数は2000年の64.7万人から2020年に29.8万人へ、20年で半分以下になりました。建設・土木作業者全体は同じ期間で約33%減なので、大工の減り方だけが突出しています。国土交通省の懇談会資料には、2035年に15.7万人(2020年比47%減)まで減るという推計も出ています。

会社が消えたとき、何が残って何が消えるか

会社が消えたときに残るものと消えるものの比較表。法律が守る10年(構造・雨漏りのみ)は残り、倒産していても保険または供託の仕組みで補修費が出る。10年を超える長期保証(30年・60年など)は消え、有償メンテナンスを条件にした各社の任意サービス。設備・内装の保証(キッチン・床暖房など)も消え、点検やメンテナンスの窓口そのものが無くなる

市場が縮んで会社の数が減っていくとすると、気になるのは「建てた後」です。

新築住宅には引き渡しから10年間の瑕疵担保責任があります。注文住宅のような請負契約なら住宅品質確保促進法94条、建売などの売買契約なら95条で定められていて、どちらも施主に不利な特約を結んでも無効になる強い規定です。

さらに住宅瑕疵担保履行法で、事業者は「保険への加入」か「供託」のどちらかで資力を確保することが義務付けられています。会社が倒産していても補修費が出るのはこの仕組みのおかげですが、請求の窓口は2つで違います。保険なら保険法人へ直接請求できます。供託の場合は国土交通大臣に損害賠償請求権の額を確認してもらったうえで、供託所(法務局)へ還付を請求するという二段階の手続きになります。自分の家がどちらなのかは引き渡し時の書類に書いてあるので、確認しておくと倒産時に迷いません。

守られる範囲は限定的で、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分だけです。

では10年を超える30年保証・60年保証はどうか。品確法97条は、契約で定めれば引き渡しから20年以内まで責任期間を伸ばせるとしています。ただし各社が掲げている長期保証はこの条文に基づく特約ではなく、有償メンテナンスの継続を条件にした任意のサービスとして設計されているのが実情です。任意である以上、会社が消えれば一緒に消えます。設備や内装の保証も同じです。

保証の年数を各社で比べても実質的な差が見えにくい理由は、ハウスメーカーの保証を比較して分かった「年数を見ても意味がない」理由で大手12社を調べたときにまとめました。無償で最長年数に到達できる会社は1社もなく、ほぼ全社が有償メンテナンスの継続を延長条件にしています。会社の存続力まで含めた話はそちらに詳しく書いています。

じゃあ、どこで建てればいいのか

ここまでの話から「大きい会社を選んでおけば安心」と結論づけたくなるのですが、それだけだと少し雑だと思っています。

理由は2つあります。

1つは、今回の大和ハウスの件が示しているように、大きい会社でも事業の取捨選択はするということです。倒産はしなくても、そのエリアから新築事業が無くなることはあります。会社が存続していても、選択肢としては消えます。

もう1つは、保証の比較記事で調べたときに分かったことですが、売上の大きさと財務の健全性は一致しないという点です。売上1位の大和ハウスは自己資本比率34.4%で大手の中では低いほうでした。一方、住宅が一部門にすぎない積水化学が59.6%で最上位です。規模はそのまま安心材料にはなりません。

契約前に確認しておきたい4つのこと。1つ目は資力確保が保険か供託か(倒産時の請求先が変わる・契約前に聞ける)、2つ目は長期保証の延長条件(有償メンテナンスが条件になっていることが多い)、3つ目は支払いのタイミング(工事の出来高に見合っているか・前払いが多すぎないか)、4つ目は撤退したエリアの体制(点検・アフターの窓口がどこになるか)

会社の規模を見るより、契約書と保証書に書いてある条件を自分で確認するほうが確実です。上の4つはいずれも契約前に営業さんへ質問できる内容です。

特に3つ目の支払いタイミングは、建築中に会社が倒産したときに効いてきます。引き渡し後の10年は法律が守ってくれますが、建築中の前払金を守る法律上の義務はありません。任意の住宅完成保証制度はあるものの、建築会社が保証機関に登録していることが前提なので、契約先が使えるかどうかは聞いてみないと分かりません。過去の倒産事例でも、被害が大きかったのは工事代金を先に払いすぎていたケースでした。

一条工務店はどうなのか

このブログは一条工務店で建てている施主のブログなので、当然そこも気になります。

棟数で見た一条工務店の位置を示す比較表。一条工務店18,631棟(ギネス世界記録の認定・2024年実績)、積水ハウス7,891戸(戸建住宅請負・国内・2025年度)、住友林業7,772棟(国内単体 戸建注文住宅 引渡・2025年12月期)、タマホーム5,176棟(注文住宅 引渡・2026年5月期)

棟数で見ると、一条工務店はギネス世界記録に「最も売れている注文住宅会社」として認定されています。2024年の実績で18,631棟。上場大手が公開しているIR資料の数字(積水ハウス7,891戸、住友林業7,772棟)と比べても、倍以上あります。

縮小している市場でこの棟数を維持しているのは、素直に強さだと思います。数が出ているということは、それだけ施工とアフターの体制を回し続けられるということでもあります。

ただ、正確に書いておきたいことが2つあります。

1つは、この18,631棟という数字に地理的な範囲の明示がないことです。一条は米国やフィリピンでも事業をしているので、国内だけの数字なのかは公開情報からは判別できませんでした。「国内シェア1位」という言い方は、一条自身も主張していますが、出典が有料の業界紙調査で、棟数もシェア率も非開示のため検証できません。

もう1つは、一条が非上場だという点です。自己資本比率も有利子負債も格付けも公開されていません。財務が悪いという話ではなく、外から確かめる手段がないという話です。上場各社は34〜60%の自己資本比率が分かるのに対して、一条だけは空欄になります。

一条でも同じ絞り込みが起きるのか

大和ハウスと一条工務店の事業構造を比較した表。大和ハウスは事業の形が賃貸・マンション・海外を持つ総合デベロッパーで拠点は都市圏中心の14支社・支店へ集約、他事業の収益があるから都市圏に絞る選択ができる。一条工務店は事業の形が戸建て住宅中心で拠点は沖縄・高知を除く全国約510か所、同じ選択をする理由は薄い

一番気になるのは「うちのメーカーでも同じことが起きるのか」というところですよね。ここは事業の形を並べてみると見通しが立ちます。

大和ハウスは戸建て以外に賃貸住宅・マンション・商業施設・海外事業を持つ総合デベロッパーです。戸建ての数を絞っても、他の事業で収益を作れます。だからこそ都市圏の14支社・支店へ経営資源を寄せるという選択ができました。

一条工務店は戸建て住宅が事業の中心で、拠点は沖縄県と高知県を除く全国に約510か所あります。事業の柱が戸建てしかない会社が、地方の新築受注を手放す理由は見当たりません。今回の大和ハウスの発表を、そのまま他社に当てはめて読むのは無理があります。

もっとも、これは「一条なら絶対に縮小しない」という保証ではありません。事業の形が違うので同じ判断にはなりにくい、というところまでです。

一条の継続性を判断する材料

一条工務店の継続性を判断する材料を整理した図。分かることは規模でグループ売上約6,251億円・従業員約7,600人・1978年設立。分からないことは財務の健全性で非上場のため自己資本比率などは非公開。構造的な弱みは戸建てへの集中度が高く市場縮小の影響を受けやすいこと。結論として会社を占うより確認できることを確認するほうが確実

分かることと分からないことを分けて置いておきます。

公開されているのは規模の情報です。グループ売上は約6,251億円、従業員は約7,600名、設立は1978年。棟数については前述のとおりギネス世界記録の認定があります。50年近く続いている会社で、事業規模も小さくありません。

分からないのは財務の健全性です。非上場なので自己資本比率も有利子負債も出てきません。上場各社なら決算短信で確認できることが、一条では空欄になります。

構造的な弱点もあります。戸建てへの集中度が高いということは、戸建て市場が縮んだときに逃げ場が少ないということでもあります。強みの裏返しです。

こうして並べると、会社の将来を外から占うのはそもそも無理があると分かります。占うより、契約書と保証書に何が書いてあるかを確認するほうが確実です。

一条の「安心30年長期保証」の中身

一条工務店の安心30年長期保証の内訳を示した表。構造耐力上主要な部分は30年で途中で切れずに続く、雨水の浸入を防止する部分は初期15年でそこから先が延長できる期間、延長の条件は15年目に無償点検と必要と判断された有償メンテを受けること、よくある誤解は10年目・20年目という説明で公式図では有償メンテは15年目のため年数が違う。30年は自動ではなく延長も会社が続いていることが前提

一条の保証は「安心30年長期保証」という名前で案内されています。中身を公式のアフターサポートのページで確認すると、部位によって年数が違いました。

構造耐力上主要な部分は30年です。途中で途切れず30年まで続きます。

雨水の浸入を防止する部分は初期保証が15年で、そこから先が延長できる期間という扱いです。延長の条件は、15年目の無償点検を受けたうえで、必要と判断された有償メンテナンス工事を実施すること。点検だけ受ければ自動で伸びるわけではありません。

ここで一つ、施主向けの情報として広まっている説明との食い違いがあります。「10年目と20年目に有償メンテナンスを受ければ延長される」という書き方をよく見かけるのですが、公式の保証図で有償メンテナンスが置かれているのは15年目です。年数が一致しません。他社の保証制度と混ざっているのかもしれませんが、契約するなら公式図と自分の保証書を見るのが確実です。

そして前の章に書いたとおり、10年を超える保証は法律の裏付けがある約束ではありません。30年という数字は会社が続いていることが前提です。一条に限った話ではなく、長期保証を掲げているメーカーはすべて同じ構造になっています。

一条は保険なのか供託なのか

資力確保措置が保険か供託かに関する統計の表。事業者名は公表されず国が出すのは全国の集計のみでどのメーカーも同じ。全国の戸数ベースでは供託49.4%・保険50.6%でほぼ半々。会社の数ベースでは99.3%が保険のみを選択し1〜数人規模の会社が大多数。国土交通大臣許可の会社では73.4%が供託で戸数ベースと逆転する。出典は国土交通省 資力確保措置の実施状況 令和7年3月31日基準日

倒産時の請求先が変わるので、自分の家が保険なのか供託なのかは知っておきたいところです。ところが、一条が保険と供託のどちらを選んでいるかは公開されていません。一条だけ隠しているのではなく、国が事業者名を公表しない制度になっているので、どのメーカーでも同じです。

国土交通省が出しているのは全国の集計だけです。令和7年3月31日を基準日とした数字を見ると、見え方が二通りあって面白いところでした。

見方供託保険
全国の戸数ベース49.4%50.6%
会社の数ベース99.3%が保険のみ
国土交通大臣許可の会社73.4%

戸数で見ればほぼ半々です。ところが会社の数で数えると99.3%が保険だけを選んでいます。数のうえでは1〜数人規模の会社が大多数だからで、供託は保証金を積む必要があるぶん、体力のある会社しか選びません。実際、複数の都道府県にまたがって営業する国土交通大臣許可の会社に絞ると、73.4%が供託でした。大手ほど供託を選ぶ傾向があるので、戸数ベースと会社数ベースで結果が逆転します。

自分の家がどちらかは書類で分かる

自分の家が供託か保険かを書類で確認する方法を示した図。供託の場合は契約前に書面を交付して説明する義務が法律にあり住宅瑕疵担保履行法第10条が根拠。保険の場合は保険証券またはこれに代わる書面が交付され同法第3条第2項が根拠。契約書類を見れば必ず分かり営業担当者に聞いてもよい

公表されていないと書きましたが、自分の家についてなら確実に分かります。書類に残るからです。

供託の場合は、住宅瑕疵担保履行法第10条で、契約前に供託所の所在地などを記載した書面を交付して説明することが事業者に義務付けられています。保険の場合は同法第3条第2項により、保険証券またはこれに代わる書面が交付されます。

つまり手元の契約書類を見れば判別できますし、これから契約する人は営業担当者に聞けば済みます。倒産という滅多に起きないことのために覚えておく話ではありますが、聞くだけならコストはかかりません。

そのうえで、これから建てる人にとって現実的に効いてくるのは、会社の大きさよりも先ほどの4つの確認事項だと思っています。一条を選んだ人も、契約時に保証書と支払いスケジュールを一度確認しておく価値はあります。

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【詳細】制度と統計の細かい話

10年保証の対象部位

住宅品質確保促進法94条(請負契約)・95条(売買契約)が定める10年間の瑕疵担保責任の対象は、次の2つに限定されます。

  • 構造耐力上主要な部分:基礎、柱、壁、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材
  • 雨水の浸入を防止する部分:屋根、外壁、開口部

住宅瑕疵担保履行法(正式名称:特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)による資力確保措置は、2009年10月1日以降に引き渡された新築住宅が対象です。保険金額は2,000万円以上、免責は10万円で、倒産時に消費者が直接請求する場合のてん補率は100%(事業者経由だと80%)。調査費・仮住居費・引越費も対象に含まれます。

着工統計の月次(2026年)

持家前年同月比
2026年1月14,418戸+6.6%
2026年2月15,501戸-4.7%
2026年3月16,659戸-27.4%
2026年4月16,296戸+19.5%
2026年5月15,708戸+31.8%
2026年6月18,553戸+15.7%
2026年7月17,730戸+0.4%

2026年3月の大幅減と4〜6月の大幅増は、前年2025年の同時期に大きな山と谷があったことの裏返しとして説明がつきます(2025年3月は前年同月比41.2%増、4月は27.6%減、5月は35.9%減)。ただし国土交通省自身はこの動きを制度改正と結び付けて説明していないので、「法改正の駆け込みと反動」と断定はできません。

建設工事費デフレーターの推移

2020年度平均を100とした指数です。

年度住宅総合木造住宅
201593.293.5
2019100.2100.1
2020100.0100.0
2021108.7110.3
2022115.3116.7
2023(暫定)114.9114.8
2024(暫定)119.3118.8
2025(暫定)122.6122.3

2023年度以降が暫定値なのは、年度実績のウエイトが未確定で2020〜2022年度の平均値を暫定的に使っているためです。また2026年4月分の公表から2020年度基準へ改定されているので、旧2015年度基準の数値とは接続しません。

上昇幅が大きかったのは2021年度(木造で10.3%上昇)と2022年度(5.8%上昇)です。いわゆるウッドショックの時期にあたります。日銀の企業物価指数で「木材・木製品」を見ると、2022年6月のピーク177.0からは16.4%下がったものの、2026年7月時点で147.9と2020年平均比では47.9%高い水準です。

建設業の担い手

  • 建設業就業者数:1997年のピーク685万人から2025年478万人(約30%減)。ただし直近4年は477〜483万人で横ばい圏で、2025年は前年比1万人増
  • 年齢構成(2025年):55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%
  • 大工:1990年76.2万人 → 2000年64.7万人 → 2010年40.2万人 → 2020年29.8万人(総務省「国勢調査」職業小分類)
  • 建設・土木作業者全体:2000年288.1万人 → 2020年194.0万人(約33%減)。大工の53.9%減と比べると減り方が緩やか
  • 大工の約40%が60歳以上、30歳未満は約7%(2020年)

倒産の要因別内訳(建設業)

要因件数
物価高倒産(2025年度)247件
後継者難倒産(2025年度)123件
人手不足倒産(2025年)113件(初の100件超)
経営者の病気・死亡(2025年)78件(過去最多)

倒産より件数が多いのが休廃業・解散で、2026年上半期の建設業で4,894件(前年同期比27.8%増)。倒産と合わせた市場からの撤退は5,937件と、2009年上半期を上回って過去最多になっています。

2025年度の建設業の倒産発生率は0.347%で、全産業平均0.284%を上回り、10年間で最悪の水準でした。

まとめ

  • 大和ハウスの発表は新築の展開エリアと価格帯の絞り込み。公式の「23エリア」は継続する側の数字で、報道の「23道県撤退」とは別物
  • 既存オーナーへのアフターサービスは全国で継続すると公式リリースに明記されている
  • 業績不振ではない。2026年3月期は増収増益で、戸建セグメントの営業利益は2倍超
  • 市場は数量が減り単価が上がっている。持家の着工は2016年比31.1%減、木造の工事費は2020年度比22.3%増、政策金利は1.0%
  • 住宅ローン控除は廃止ではなく2030年末まで延長された
  • 倒産は4年連続増だが、91.4%は従業員10人未満の小規模事業者
  • 10年を超える長期保証に法的な裏付けはない。会社が存続していることが前提の約束
  • 会社の規模だけで判断せず、資力確保の方法・延長条件・支払いタイミング・アフターの窓口を契約前に確認するのが確実
  • 一条工務店は戸建て中心で拠点も沖縄・高知を除く全国約510か所。大和ハウスと事業の形が違うので、同じ絞り込みをする理由は見当たらない
  • 一条の「安心30年長期保証」は、構造耐力上主要な部分が30年、雨水の浸入を防止する部分は初期15年。延長の条件は15年目の無償点検と必要と判断された有償メンテナンス工事
  • 保険か供託かは事業者名が公表されない。自分の家がどちらかは契約書類で確認できる

市場が縮んでいるのは事実ですが、それは「今すぐ建てないと危ない」という話でも「大手なら安心」という話でもありませんでした。確認できることを確認して選ぶ、というところに落ち着くと思います。

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参考にした一次情報

よくある質問

大和ハウスで建てた家のアフターサービスはなくなりますか?
なくなりません。2026年9月3日の公式リリースに「既存のオーナー様へのアフターサービスについては、大和ハウスパートナーズ株式会社が引き続き全国で提供していきます」と明記されています。今回の発表は新築の受注体制の話であって、すでに建てた人の保証や点検を打ち切るものではありません。
大和ハウスは経営が苦しくて撤退するのですか?
決算数値を見る限り業績不振ではありません。2026年3月期の連結決算は売上高5兆5,768億円(前期比2.6%増)、営業利益6,148億円(同12.6%増)と増収増益です。戸建住宅事業セグメントも売上高17.3%増、営業利益は123.0%増でした。量を追わず単価を上げる方向への戦略転換と読むのが自然です。
住宅ローン控除は2030年になくなるのですか?
なくなりません。令和8年度税制改正で入居期限が5年延長され、令和8年1月1日から令和12年(2030年)12月31日までの入居が対象になりました。2030年末は廃止の年ではなく、延長された後の期限です。あわせて床面積要件が40平方メートル以上に緩和され、子育て世帯・若者夫婦世帯への借入限度額の上乗せも拡充されています。
一条工務店の「安心30年長期保証」は何が30年なのですか?
構造耐力上主要な部分が30年です。公式のアフターサポートのページでは、構造耐力上主要な部分は途中で途切れずに30年まで続き、雨水の浸入を防止する部分は初期保証が15年でそこから先が延長期間という形になっています。延長の条件は15年目の無償点検を受けたうえで、必要と判断された有償メンテナンス工事を実施することです。「10年目と20年目に有償メンテナンスを受ければ延長される」という説明が広まっていますが、公式の図とは年数が一致しません。
自分の家の10年保証が保険なのか供託なのか、どうすれば分かりますか?
契約時の書類で確認できます。供託の場合は住宅瑕疵担保履行法第10条で、契約前に供託所の所在地などを記載した書面を交付して説明する義務が事業者側にあります。保険の場合は同法第3条第2項により、保険証券またはこれに代わる書面が交付されます。どちらの書類が手元にあるかを見れば判別でき、契約前に営業担当者へ質問することもできます。国は事業者名を公表していないので、外から調べることはできません。
ハウスメーカーが倒産したら10年保証はどうなりますか?
2009年10月1日以降に引き渡された住宅なら、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の補修費は守られます。住宅瑕疵担保履行法で事業者に保険加入か供託が義務付けられているためです。ただし請求の窓口は違い、保険なら保険法人へ直接請求、供託なら国土交通大臣の確認を経て供託所へ還付請求という手続きになります。また10年を超える独自の長期保証や設備の保証は法律の対象外で、会社が消えれば一緒になくなります。

ろれさん

ろれさん

一条工務店グランスマートで埼玉県に21坪の平屋を建てた施主。家づくりの経験をYouTube・ブログ・Webツールで発信中。

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