沖縄県で一条工務店は建てられません。沖縄の家づくりが本土と違う理由【2026年版】
「一条工務店で家を建てたい」と思って沖縄県で展示場を探しても、見つかりません。
沖縄県は一条工務店の営業エリア外です。全国で営業エリア外になっているのは、沖縄県と高知県の2県だけです。
ただ、この記事でお伝えしたいのはそこではありません。沖縄では、そもそも本土と同じ家づくりの前提が成り立たないという点です。木造住宅がほとんどなく、県独自の決まりがあり、断熱の指標さえ本土とは別物です。
私(ろれさん)は埼玉県で一条工務店の平屋を建築中の施主です。沖縄に住んだことはないので、体感の暑さや台風の怖さは語れません。そのぶん公的な統計と沖縄県の資料だけを根拠に、沖縄で高性能な家を考えるときに何が違うのかを整理します。
一条をおすすめする記事にはなりません。建てられないものを勧めても意味がないからです。そのかわり、他県向けの記事をそのまま参考にすると危ういという点をお伝えします。
結論:沖縄は本土と同じ前提で家を考えられない
先に要点をまとめます。
| 論点 | 沖縄の状況 |
|---|---|
| 一条工務店は? | 営業エリア外。高知県と合わせて全国で2県のみ |
| 木造住宅は? | 3.5%しかない(全国は54.0%) |
| 県独自の決まり | 木造には条例で追加の対策が義務付けられている |
| 断熱の指標 | 断熱等級7が制度上存在しない。評価軸が夏向き |
| 暖房は? | 冬に0℃を下回る日が平年値でゼロ。灯油代は青森の42分の1 |
| 台風 | 年間接近数7.7個で本土全体(5.8個)より多い |
沖縄で一条工務店だけが特殊なわけでもありません。本土の大手ハウスメーカー8社を調べたところ、沖縄県内に展示場を持っていたのは1社だけでした。沖縄の住宅市場は本土とは別の構造になっています。
沖縄の住宅は96.5%が木造以外
沖縄の家づくりを理解するうえで、最も重要な数字がこれです。
| 構造 | 沖縄県 | 全国 |
|---|---|---|
| 木造 | 3.5%(21,700戸) | 54.0% |
| 鉄骨・鉄筋コンクリート造 | 93.8%(588,700戸) | 36.6% |
| 鉄骨造 | 1.3%(8,100戸) | 9.1% |
全国では住宅の半分以上が木造ですが、沖縄では3.5%しかありません。鉄筋コンクリート造などが93.8%を占め、全国(36.6%)の2.6倍です。
一条工務店は木造住宅のメーカーです。沖縄ではそもそも木造という選択自体が主流ではない、というのが前提になります。
ただし変化の兆しもあります。沖縄県の資料によると、2023年の調査では統計開始の1973年以降ではじめて木造の戸数が増加しました(前回比+1,900戸、+9.5%)。極端に少ない水準からではありますが、木造が増え始めています。
なぜ沖縄でRC造が主流になったのか
これは単純化しないほうがよさそうです。
建築学会の論文(権藤智之ほか、2010年)では、戦後復興期に木造住宅が台風やシロアリで大きな被害を受けた一方、基地建設のために整備されたRC系の材料供給体制が民間工事にも活用され、コンクリートブロック造やRC造が急速に普及したと説明されています。
一方で琉球大学の研究(知念良之・芝正己、2015年)は「台風やシロアリ以外も十分に検討されるべき」として、復興金融の貸付期間がコンクリートブロック造に有利だったこと(木造8→15年に対しCB造10→20年)や、1964年のセメント工場操業といった経済的な要因を挙げています。
「沖縄がRC造なのは台風とシロアリのせい」と一言でまとめると、研究の指摘とずれます。気候だけでなく、戦後の経済・金融・資材供給の事情も重なった結果だと理解しておくのが正確です。
沖縄県は条例で、木造に追加の対策を義務付けている
沖縄で木造住宅を建てる場合、本土にはない決まりが加わります。沖縄県が条例で、国の基準に上乗せした対策を定めているためです。
| 内容 | 定め |
|---|---|
| 床の高さと換気 | 最下階の居室の床が木造の場合、床を地面から50cm以上上げ、外壁の床下部分に壁の長さ5m以下ごとに面積500cm²以上の換気孔を設ける |
| シロアリ対策(地面付近) | 木造建築物等の地面から1m以内の木造部分に、しろありその他の虫による害を防ぐ措置を講じる |
| シロアリ対策(構造部) | 階数2以上かつ延べ面積500m²超の木造建築物の構造耐力上主要な部分に、しろありによる害を防ぐ措置を講じる |
床の高さについて、県の解説には「高温多湿である沖縄県の気候に対応した規定となっています」と明記されています。シロアリ対策についても、国の基準による措置に「加えて」講じるものと説明されています。
沖縄はイエシロアリの生息域で、住宅ローンのフラット35の仕様書でも防蟻地域区分が最も厳しい区分に分類されています。木造で建てるなら、本土にはない要件が加わるというのが実務上の前提です。
沖縄には「断熱等級7」という等級が存在しない
ここは他県の情報を参考にする際、特に注意してほしい点です。
沖縄県は省エネ基準の8地域に区分されます。この区分は全国で沖縄県の41市町村と、東京都小笠原村、鹿児島県の奄美群島12市町村だけです。
そして8地域には、本土と決定的に違う点があります。
| 地域区分 | 断熱性能の基準(UA値) | 夏の日射の基準(ηAC値) |
|---|---|---|
| 1・2地域 | 0.46 | 定めなし |
| 3地域 | 0.56 | 定めなし |
| 4地域 | 0.75 | 定めなし |
| 5〜7地域 | 0.87 | 3.0〜2.7 |
| 8地域(沖縄県全域) | 基準なし | 6.7 |
8地域では、断熱性能を示すUA値の基準そのものが定められていません。かわりに使うのが、夏の日射をどれだけ遮れるかを示す指標です。冬の熱の逃げにくさではなく、夏の日射の入りにくさで評価するということです。
さらに断熱等性能等級も、8地域には等級7の設定がありません。制度上の最高は等級6です。
つまり本土でよく語られる「UA値がいくつ」「断熱等級7が標準」といった指標は、沖縄では成立しない、あるいは意味が変わります。他県の施主ブログやハウスメーカーの本土向け資料を読むときは、この点を踏まえてください。
沖縄で高性能な家を考えるなら、断熱よりも日射遮蔽と除湿が主戦場になる、というのが制度の設計から読み取れることです。
冬の暖房はほぼ不要。一方で台風は本土全体より多い
気候の前提も本土とは大きく違います。気象庁の平年値(1991〜2020年)で比べます。
| 指標 | 那覇 | 東京 | 青森 |
|---|---|---|---|
| 年平均気温 | 23.3℃ | 15.8℃ | 10.7℃ |
| 1月の平均気温 | 17.3℃ | 5.4℃ | −0.9℃ |
| 冬日(最低0℃未満)の日数 | 0.0日 | 15.2日 | 102.5日 |
| 熱帯夜(最低25℃以上)の日数 | 107.3日 | 17.8日 | 0.6日 |
| 真夏日(最高30℃以上)の日数 | 102.5日 | 52.1日 | 14.7日 |
| 年平均相対湿度 | 73% | 65% | 75% |
那覇は冬日が平年値でゼロです。1月でも日最低気温の平均が14.9℃あります。全館床暖房のような暖房設備の前提が、そもそも成り立ちません。
家計調査を見ると、那覇市の灯油代は年2,203円で、青森市(92,401円)の約42分の1です。数量では51都市中の最下位でした。
一方で熱帯夜は年107.3日、東京の6倍です。ただし猛暑日(最高35℃以上)は那覇0.2日に対して東京4.8日なので、「猛烈に暑い」というより「暑さが途切れない」気候だと言えます。
台風の接近数は本土全体を上回る
| 地方 | 年間接近数(平年値) |
|---|---|
| 沖縄 | 7.7個 |
| 本土計 | 5.8個 |
| 九州北部 | 3.8個 |
| 関東甲信 | 3.3個 |
| 北海道 | 1.9個 |
沖縄1地方だけで、本土全体の接近数(5.8個)を上回ります。関東甲信の2.3倍です。
最大瞬間風速の記録でも、平地の観測地点では宮古島の85.3m/s(1966年)が全国最高です。与那国島81.1m/s(2015年)、那覇73.6m/s(1956年)と続きます。
【詳細】沖縄県の住宅事情と電気料金
ここからは、より細かいデータを見たい方向けの内容です。
注文住宅の相場
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査(2024年度、注文住宅)による沖縄県の数値です。
| 項目 | 沖縄県 | 全国 |
|---|---|---|
| 建設費 | 3,587.1万円 | 3,932.1万円 |
| 住宅面積 | 108.2m² | 118.5m² |
| 敷地面積 | 246.8m² | 329.7m² |
| 世帯年収 | 549.9万円 | 652.5万円 |
| 件数 | 31件 | 3,272件 |
建設費は全国より約345万円低いものの、住宅面積も10m²小さいという結果です。サンプル数31件と少ないため、参考値として見てください。
持ち家率は全国最下位
令和5年住宅・土地統計調査による沖縄県の数値です。
- 持ち家住宅率 42.6%(全国60.9%)で全国最下位。50年間で25.6ポイント低下
- 共同住宅率 60.9%(全国44.9%)で東京都に次いで全国2位
- 一戸建て 37.4%
- 総住宅数の増加率7.2%は全国最高、空き家率9.4%は全国で2番目に低い
戸建てより集合住宅が主流という点も、本土との大きな違いです。
電気料金は本土より高い
沖縄電力と東京電力エナジーパートナーの従量電灯の単価を比べます。
| 区分 | 沖縄電力 | 東京電力EP |
|---|---|---|
| 第1段階 | 40.20円/kWh | 29.80円/kWh |
| 第2段階 | 45.74円/kWh | 36.40円/kWh |
| 第3段階 | 47.72円/kWh | 40.49円/kWh |
電力量料金は全段階で沖縄電力が上回ります。ただし料金体系(基本料金・最低料金の扱い)が異なるため、単価だけの単純比較には限界があります。燃料費調整額や再エネ賦課金も別途かかります。
沖縄電力は高コスト構造の理由について、「小規模独立系統のため、高い供給予備力が必要」「原子力や水力の開発が困難であり、化石燃料に頼る電源構成」「本土の電力系統と連系されておらず、広域融通の枠外」と説明しています。2024年度の電源構成は石炭60%、LNG22%、石油11%で、化石燃料が93%を占めます。
一方で家計調査では、那覇市の電気代の年間支出は138,848円で、全国平均(149,965円)より少なくなっています。単価は高いが暖房需要がないぶん使用量が少ない、という構造です。
まとめ:他県の情報をそのまま持ち込まないこと
この記事の要点をまとめます。
- 沖縄県は一条工務店の営業エリア外。全国で対象外は沖縄県と高知県の2県のみ
- 営業していない理由は公表されていない。台風・シロアリ説は公式見解ではない
- 沖縄の木造率は3.5%(全国54.0%)。RC造等が93.8%。ただし2023年に統計開始以来はじめて木造戸数が増加
- 沖縄県は条例で木造に追加の対策を義務付け。床高50cm以上・換気孔・シロアリ対策など
- 沖縄は8地域で、断熱等級7という等級が制度上存在しない。評価軸も夏の日射向き
- 冬日ゼロ、灯油代は青森市の約42分の1。暖房設備の前提が成り立たない
- 台風接近は年7.7個で本土全体(5.8個)を上回る
- 本土大手8社のうち沖縄に展示場があったのは1社のみ
沖縄で家づくりを考えるなら、本土向けの情報をそのまま持ち込まないことが一番大事だと感じました。「UA値」「断熱等級7」「全館床暖房」といった、本土では当たり前に語られる指標が、沖縄では意味を持たなかったり制度上存在しなかったりします。
一条工務店を検討していた方には残念な結論になりますが、建てられないものを勧めるより、前提が違うことを正確にお伝えするほうが役に立つと考えてこの記事を書きました。
一条工務店の性能そのものに興味がある方向けに、当ブログでは仕様や判断の記事を書いています。本土に家を建てる予定がある方は参考にしてください。
関連記事
参考にした情報
この記事の数値は、以下の公的資料と公式情報から取得しています。施主ブログやまとめサイトの数値は使用していません。
- 一条工務店公式 会社概要
- 気象庁 過去の気象データ検索 平年値(那覇)、台風の平年値、歴代全国ランキング
- 国土交通省 地域区分(告示第265号 別表第10)、評価方法基準
- e-Gov 建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令
- 沖縄県 建築基準法施行条例の解説、令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点
- 総務省統計局 家計調査 品目別都道府県庁所在市ランキング
- 住宅金融支援機構 2024年度フラット35利用者調査
- 国立環境研究所 侵入生物データベース イエシロアリ
- 沖縄電力 単価一覧表、経営参考資料集 2025年11月
よくある質問
- 沖縄県で一条工務店の家は建てられますか?
- 建てられません。一条工務店の営業エリアは「沖縄県・高知県を除く全国」とされており、沖縄県内に展示場もありません。営業エリア外なのは沖縄県と高知県の2県だけです。
- 一条工務店が沖縄県で営業していない理由は公表されていますか?
- 公表されていません。台風・シロアリ・塩害・物流コストなどの理由が語られることがありますが、いずれも一条工務店が公式に説明したものではないため、この記事では推測を書きません。
- 沖縄県で木造住宅は一般的ですか?
- 一般的ではありません。令和5年住宅・土地統計調査によると、沖縄県の住宅のうち木造は3.5%で、全国の54.0%と大きく異なります。鉄骨・鉄筋コンクリート造が93.8%を占めます。ただし2023年の調査では、統計開始の1973年以降ではじめて木造の戸数が増加しました。
- 沖縄では断熱等級7の家は建てられますか?
- 沖縄では断熱等級7という等級そのものが制度上ありません。沖縄県は省エネ基準の8地域に区分され、この区分では断熱性能を示すUA値の基準が定められておらず、夏の日射をどれだけ遮れるかを示す指標で評価します。等級も最高が6までです。本土向けの「断熱等級7」という指標は沖縄では成立しないので、他県の情報をそのまま持ち込まないよう注意してください。
- 沖縄県で木造住宅を建てる場合、本土と違う決まりはありますか?
- あります。沖縄県は条例で、木造住宅に対して国の基準に加えた対策を義務付けています。最下階の居室の床が木造なら地面から50cm以上上げて換気孔を設けること、地面から1m以内の木部にシロアリ対策を講じることなどが定められています。高温多湿の気候に対応した規定だと県が説明しています。