一条工務店が、2026年10月1日に「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を公表しました。
ニュースを見て「打ち合わせで要望を言いにくくなるのでは」と不安になった方もいると思います。 この記事では、一条工務店で打ち合わせを重ねてきた建築中の施主(ろれさん)が、方針を項目ごとに読んでいきます。
結論:方針は妥当で、施主に不利な内容はなかった
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方針の要点 | 対象になる行為を5つに分けて例示。会社は組織で対応し、該当すると判断した場合は対応の打ち切りなどをとることがある |
| ろれさんの感想 | 非常に妥当で、施主に不利になるようなことは全くなかった |
| ろれさんの進め方 | 値引き交渉はしていない。要望は Miro にまとめ、URL を設計士と営業に共有した |
方針は、お客様からの意見や要望を「品質およびサービス向上のために不可欠」と書いています。 要望を伝えること自体を止めるものではありません。
ここからは、ろれさんの打ち合わせの進め方を先に紹介し、そのあと方針の中身を細かく見ていきます。
値引き交渉をしなかった理由:値引き交渉のない一条工務店を選んだから
ろれさんは、一条工務店との打ち合わせで値引き交渉を1度もしていません。
そもそも一条工務店は、基本的に値引き交渉ができない会社です。 価格を下げる方法は、知人紹介・提携割引・親族紹介といった制度に限られます(制度の中身は「一条工務店に割引はある?値引き交渉ができない代わりに使える3つの制度」で詳しく解説しています)。
ろれさんの場合、順番が逆でした。 値引き交渉をしたくなかったので、値引き交渉のない一条工務店を選んだのです。
ろれさんに紹介をお願いする要望は Miro にまとめ、URL を設計士と営業に共有した
要望の伝え方は、オンラインホワイトボードの Miro を中心にしていました。
打ち合わせの合間に、要望を図面の上にまとめる
打ち合わせと打ち合わせの間に、次に伝えたいことを Miro に整理しておきます。 図面の画像を貼り、付箋と矢印で「ここをこうしたい」を書き込んでいく形です。
文字だけのメモと違って、図面のどこの話なのかが一目で伝わります。 ろれさんは一時期スプレッドシートで管理しようとしましたが、文字だけでは全体を把握しにくく、Miro に落ち着きました。
URL を設計士と営業に共有して、いつでも見られるようにする
ろれさんは Miro のボードを公開設定にして、その URL を設計士と営業に共有していました。
- 相手は打ち合わせの日以外でも、いつでもボードを開いて確認できる
- 同じボードを開けば、その場で同時に書き込みながら話せる
打ち合わせ当日は、このボードをもとに要望を伝えていきます。 打ち合わせが終わるたびに隣へ新しいボードを作るので、過去の要望もすべて残ります。
Miro の具体的な使い方は「一条工務店の打ち合わせ準備|無料ツール3つで質が10倍変わる方法」にまとめています。
一条工務店のカスハラ基本方針の全体像
方針は5つの項目でできています。
| 項目 | 書いてあること |
|---|---|
| 1. はじめに | 従業員が心身ともに健康で安全に働ける環境を守り、すべてのお客様に変わらない品質と安心を届けるため |
| 2. 定義 | 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づく |
| 3. 対象となる主な行為 | 5つに分けて例示(これに限らない) |
| 4. 対応姿勢 | 組織的対応・対応の打ち切り・外部機関との連携 |
| 5. お客様へのお願い | 方針への理解と協力のお願い |
「はじめに」では、お客様からの意見や要望は品質とサービスの向上に欠かせない、とはっきり書かれています。 行き過ぎた要求が見られるのは「ごく一部」としていて、最後の「お客様へのお願い」では、多くのお客様の良識ある対応にお礼も述べています。 そのうえで「社会通念上相当な範囲を超えた要求」や、従業員の人格を否定する言動が対象だと説明しています。
ろれさんに紹介をお願いする正当な要望とカスハラの境目は「要望の中身」と「伝え方」
要望を伝えたいけれど、どこからがカスハラなのか分からない。 ここが一番気になるところですよね。
方針の定義は、要求の中身が妥当かどうかを物差しにしています。
- 要求の中身(妥当性)に照らして
- その要求を通すための手段・態様が、社会通念上ふさわしくなく
- その手段・態様によって、従業員の働く環境が害されるもの
厚生労働省のマニュアルでは、要求の中身が正当でも、伝え方の悪質性が高ければ対象になりうるとしています。
施主がよくやりとりする場面と、方針の文言を並べると次のようになります。
| 施主の行動 | 方針の文言 |
|---|---|
| 要望や意見を伝える | お客様の意見や要望は「品質およびサービス向上のために不可欠」 |
| 値引きについて相談する | 対象は「金銭や法外な値引きの要求」 |
| 同じ要望をもう一度伝える | 対象は「執拗に同じ要求を繰り返す行為」 |
| 打ち合わせ以外で連絡する | 対象は「深夜・休日を問わない度重なる電話やメール・LINE等での連絡」 |
| 不満や納得できない点を伝える | 対象は「大声での威圧、恫喝、暴言」などの伝え方 |
どの行為にも「法外な」「執拗に」「度重なる」といった程度を表す言葉がついています。 相談する、もう一度伝える、連絡するといった行動そのものを対象にした書き方ではありません。
なお、該当するかどうかは一条工務店が事案ごとに判断する、と方針に書かれています。
【詳細】対象となる主な行為5つ
方針の「3. 対象となる主な行為」を、文言どおりに並べます。 方針は、これらは一例でこれに限らないとしています。
| 分類 | 方針に挙げられている例 |
|---|---|
| 身体的・精神的な攻撃 | 暴行、傷害、大声での威圧、恫喝、暴言、侮辱、名誉毀損 |
| 継続的・執拗な行為 | 不退去、長時間の居座りや拘束、深夜・休日を問わない度重なる電話やメール・LINE等での連絡、執拗に同じ要求を繰り返す行為 |
| 過剰または不合理な要求 | 社会通念上過剰なサービス提供の要求、合理的な理由のない謝罪(土下座や謝罪文の提出等)の強要、金銭や法外な値引きの要求 |
| 従業員個人への攻撃 | 従業員等のプライバシー侵害、無断録音・無断撮影したデータ等のインターネット上への公開、誹謗中傷 |
| 各種ハラスメント行為 | 従業員に対するセクシュアルハラスメント等の行為 |
ここでいう「従業員等」には、一条工務店の従業員だけでなく、業務委託先や協力会社の人も含まれます。 営業や設計士だけでなく、家づくりで関わる協力会社の人への言動も対象になるということです。
【詳細】一条工務店の対応姿勢
方針の「4. カスタマーハラスメントへの対応姿勢」には、3つの対応が書かれています。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 組織的対応 | 従業員個人に任せず、複数人のチームで対応する。事実関係を把握するため、電話や打ち合わせの録音・録画を実施する場合がある |
| 対応の打ち切り | 契約上・法令上の義務を踏まえたうえで、対応方法の変更、打ち合わせの中止や制限、連絡方法の限定、事業所や建築現場への立ち入りのお断り、今後の契約やサービス提供のお断りなど |
| 外部機関との連携 | 悪質性が高い場合などは、警察や弁護士などと連携し、法的措置を含めて対処する |
録音・録画で取得した情報は、事実関係の確認や従業員の安全確保、対応品質の向上などの目的の範囲で管理する、とされています。
まとめ:要望は遠慮せず、中身と伝え方を整えて伝える
- 要望や意見を伝えることは、方針でも品質向上に欠かせないものとされている
- 値引きについて対象になるのは「金銭や法外な値引きの要求」
- 繰り返しや連絡は「執拗に」「度重なる」といった程度が対象
- ろれさんは値引き交渉をせず、要望は Miro にまとめて設計士と営業に共有した
- 方針を読んだろれさんの感想は「非常に妥当で、施主に不利になるようなことは全くなかった」
方針は、要望を伝えること自体を止めるものではありません。 不安になった方は、要望の中身と伝え方の2つを意識しておけば大丈夫です。
一条工務店で家づくりを考えている方は、展示場に行く前に紹介制度のことも知っておいてください。 制度の内容は「一条工務店の紹介制度」で解説しています。
ろれさんに紹介をお願いする参考にした一次情報
- 一条工務店「カスタマーハラスメントに対する基本方針」
- 一条工務店「「カスタマーハラスメントに関する基本方針」について」(2026年10月1日)
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策」(あかるい職場応援団)