一条工務店はナフサショックに強いのか?フィリピン工場の内製化を調べてみた
「一条工務店はナフサの加工を自社でやっているから、ここ数年は値上げの影響を受けにくいらしい」――2026年に入ってナフサショックが話題になるなか、SNSでこんな話を見かけました。
本当なら、これから一条工務店で建てる人には大きな安心材料です。でも、家づくりに関わる「値上げに強い/弱い」という情報は、間違っていると数十万円〜百万円単位の判断を誤らせてしまいます。
そこでこの記事では、「一条工務店は本当にナフサショックに強いのか?」を公開情報をもとに中立的に検証しました。先に言っておくと、「内製化で有利な面はあるが、原料の高騰そのものは一条でも避けられない」というのが調べた結論です。なぜそう言えるのか、順番に見ていきます。
なお、筆者(ろれさん)は一条工務店の値上げ担当者ではないので、社内の正確な数値までは分かりません。ここで扱うのは公開されている記事・各社の発表をもとにした整理だと考えてください。
結論:内製化は「効く部分」と「効かない部分」がある
最初に結論をまとめます。
- 一条工務店がフィリピンの自社工場で樹脂サッシや断熱材を内製化しているのは事実
- 内製化が効くのは「加工費・人件費・物流・為替」の部分。ここはコストを抑えやすい
- 一方、ナフサそのもの(原料)の価格高騰には、内製化していても抗えない
- 「8割自社加工だから2年は値上げしない」といった具体的な数値・期間の確証は、公開情報では見つからなかった
つまり「一条だから完全に値上げと無縁」ではなく、「他社よりは原価を抑えやすい構造を持っているが、原料高騰の波は受ける」と理解するのが正確です。
そもそもナフサショックとは
ナフサは原油を蒸留してつくられる石油製品で、プラスチックや樹脂など石油化学製品の「おおもとの原料」です。住宅では、断熱材・樹脂サッシ・塩ビ管(給排水)・壁紙の接着剤・電気配線の被覆など、至るところにナフサ由来の素材が使われています。
2026年のナフサショックは、中東情勢の緊迫化が引き金になりました。報道によると、2026年3月にはナフサ市況がわずか2週間で1トンあたり600ドル台後半から1,100ドル前後へと急騰したとされています。日本はナフサの多くを中東産に依存しているため、ホルムズ海峡の通航リスクが供給網を直撃した形です。
この影響で、住宅建材は軒並み値上げ・出荷制限に入りました。
| 建材・メーカー | 値上げ率の目安 | 時期 |
|---|---|---|
| 旭化成建材(ネオマフォーム/断熱材) | 約20% | 2026年5月出荷分〜 |
| カネカ(押出ポリスチレンフォーム) | 約40% | 2026年4月〜 |
| デュポン・スタイロ(スタイロフォーム) | 約40% | 2026年5月出荷分〜 |
| アキレス(硬質ウレタンフォーム) | 約40% | 2026年5月出荷分〜 |
| 積水化学工業(塩ビ管) | 約12〜20% | 2026年5月出荷分〜 |
新築住宅1棟あたりでは、原価増が数十万円〜、見方によっては100万〜150万円程度の上昇につながるという試算もあります。家づくり全体に関わる話なので、「うちのハウスメーカーは大丈夫なのか」が気になるのは当然です。
一条工務店の「内製化」とは何か
一条工務店が値上げに比較的強いと言われる根拠が、フィリピンにある巨大な自社工場での内製化です。
一条工務店はフィリピンの輸出加工区(経済特区)に自社工場を持ち、樹脂サッシ・EPS断熱材・ドア・キッチン・収納など、家づくりに必要な多くの部材を自社で生産しています。アメリカから輸入した素材と組み合わせて壁パネルまで組み立て、それを日本へ輸出するという一貫生産体制です。
この仕組みのポイントは3つあります。
- 設計図面の作成から部材加工・住宅設備の製造までを自社で一気通貫で行う
- 輸出加工区にあるため、原材料の輸入関税・パネル輸出時の関税がかからない
- 中間業者を挟まないため、加工費や物流マージンを抑えられる
一般的なハウスメーカーが「メーカーから完成品の建材を仕入れる」のに対し、一条は「素材から自社で加工する」ため、加工に乗る費用をコントロールしやすい構造になっています。これが「一条は値上げに強い」と言われる背景です。
ではナフサショックに強いのか:効く部分・効かない部分
ここが今回のいちばん大事なところです。内製化がコストのどこに効くのかを分解すると、強い・弱いがはっきりします。
建材の値段は、ざっくり「原料費 + 加工費・人件費 + 物流費 + 中間マージン」で決まります。
| コストの内訳 | 内製化で抑えられるか |
|---|---|
| 原料費(ナフサそのもの) | 抑えられない(市況で決まる) |
| 加工費・人件費 | 抑えやすい(フィリピンで自社加工) |
| 物流費・中間マージン | 抑えやすい(一貫生産・関税優遇) |
内製化が効くのは、後半の「加工費・人件費・物流・マージン」の部分です。ここは一条が自社でコントロールできるので、同じ建材でも他社より原価を抑えやすい。これは間違いなく強みです。
一方で、ナフサショックで上がっているのは一番上の「原料費」です。ここは世界の市況で決まるため、いくら自社で加工していても、仕入れる素材の値段が上がれば一条も影響を受けます。実際、複数の住宅メディアが「一条工務店は内製率が高いが、原料そのものの高騰には抗えない」「どのメーカーも等しく値上げの波にさらされている」と指摘しています。
たとえるなら、内製化は「人件費の安い自社の厨房で料理する」ようなもの。調理コストは抑えられますが、仕入れる食材(原料)の値段が高騰すれば、料理の値段も上がります。内製化は値上げを「ゼロにする魔法」ではなく、「値上げ幅を小さく抑えやすい構造」だと考えるのが実態に近いはずです。
「8割自社加工で2年は大丈夫」は本当か
SNSなどで見かける「ナフサの加工を8割自社でやっているから2年は値上げしない」という具体的な数値・期間については、今回調べた範囲の公開情報では確認できませんでした。一条の高い内製率はよく知られていますが、「8割」という比率や「2年」という期間を裏づける一次情報は見当たりません。
数字が独り歩きしている可能性があるので、この記事では「内製化で有利な構造はあるが、具体的な値上げ猶予期間まで断言はできない」という扱いにとどめます。確かな情報が出たら追記します。
これから一条で建てる人がやるべきこと
ナフサショックの局面で家づくりをする人に向けて、現実的な対策を整理します。
- 値上げの時期と金額を担当者に確認する。一条には「仮契約から一定期間内に着手承諾すれば坪単価が上がらない」というルールがあるため、自分の契約がいつまで価格を維持できるのかを早めに把握する
- 内製化を「値上げしない理由」ではなく「値上げ幅を抑えやすい理由」として理解する。過度な安心も過度な不安も避ける
- 補助金で原価増を相殺する発想を持つ。2026年は国の補助金が手厚く、値上げ分の一部をカバーできる可能性がある
補助金については別記事で詳しくまとめています。あわせて読んでみてください。
まとめ
「一条工務店はナフサショックに強いのか?」を検証した結論はこうです。
- フィリピン工場での内製化は事実で、加工費・人件費・物流の面では他社より原価を抑えやすい
- ただしナフサ(原料)そのものの高騰には、内製化していても抗えない
- 「8割・2年」といった具体的な数値・期間は公開情報では確認できなかった
- 「値上げと無縁」ではなく「値上げ幅を抑えやすい構造を持つ」と理解するのが正確
家づくりは大きな買い物なので、噂や数字を鵜呑みにせず、自分の契約条件を担当者に確認するのがいちばん確実です。
一条工務店を検討するなら紹介制度がお得
一条工務店には紹介制度があり、紹介経由で契約すると割引やオプションの優遇を受けられることがあります。ナフサショックで建材費が上がっている局面だからこそ、使える制度はしっかり使いたいところです。
紹介制度の仕組みや使い方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
この記事の情報は2026年6月時点で公開されている報道・各社発表をもとに整理したものです。ナフサ市況や各社の値上げ状況は刻々と変わるため、最新の情報は各社の公式発表や担当者への確認をおすすめします。
よくある質問
- ナフサショックとは何ですか?
- ナフサは原油を蒸留してつくられる石油化学製品の原料で、断熱材・樹脂サッシ・塩ビ管・壁紙の接着剤などに使われています。2026年は中東情勢の緊迫化が引き金となり、ナフサ市況がわずか2週間で急騰し、住宅建材が軒並み値上げ・出荷制限に入りました。
- 一条工務店はナフサショックに強いのですか?
- 内製化で有利な面はありますが、原料高騰そのものは避けられません。フィリピンの自社工場での内製化により加工費・人件費・物流の面では他社より原価を抑えやすい一方、ナフサそのものの価格高騰には内製化していても抗えません。
- 「一条工務店は8割自社加工だから2年は値上げしない」は本当ですか?
- 公開情報では確認できませんでした。一条工務店の高い内製率はよく知られていますが、「8割」という比率や「2年」という期間を裏づける一次情報は見当たりません。数字が独り歩きしている可能性があり、具体的な値上げ猶予期間までは断言できません。