ろれさんの一条工務店攻略日記
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一条工務店でV2Hは必要?我が家が見送った理由と損得の分かれ目

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「一条工務店でV2Hを導入している方いますか?」

SNSでこの話題が伸びていて、うちのYouTubeにも「ろれさんはV2Hを検討されましたか?」というコメントが届きました。蓄電池を2台にする代わりに、1台にしてV2Hの工事費に充ててEVを買おうか悩んでいる、という相談です。

結論から言うと、我が家はV2Hを検討したうえで採用しませんでした。ただ「じゃあV2Hに価値がないのか」と言われるとまったく違って、実際にV2Hで年間のエネルギー費をほぼゼロに近づけている一条施主の方もいます。

調べてみると、この話は損得の計算より前に整理すべきことがいくつもありました。

30秒でわかるこの記事の結論

論点結論
一条の「V2H」世間のV2Hとは別物とみられる。車のコンセントから給電する仕組み
対応する車CHAdeMO規格の車だけ。テスラなどは使えない
損得の分かれ目金額ではなく「昼間に車が家にあるか」
燃料費の削減V2Hがなくても200V普通充電で得られる
見落とされるコストEVバッテリーの劣化。据置蓄電池とは土俵が違う
補助金地域差が極端。埼玉県は2026年度に県補助がゼロ
今できる準備先行配管で選択肢を残す。ただし補助金対象外

筆者(ろれさん)は埼玉県で建築中の未入居です。この記事はV2Hを使った体験談ではなく、打ち合わせ段階でどう判断するかを一次情報で整理した内容になります。試算に使った推定値と、その推定を変えると結論がどう動くかも隠さず書きました。

一番の落とし穴は「一条のV2H」と「世間のV2H」が別物なこと

一条工務店の公式サイトには「オリジナルV2Hシステム」という言葉が出てきます。V2Hと書いてあるので、ニチコンなどの製品と同じものだと思ってしまいますよね。ところが注記を読むと、こう書かれています。

※4 ガソリン車からの給電も可能ですが、電気自動車等より出力は下がります。また、別途ケーブル、インバータをご用意いただく必要がございます。

※5 車側にAC100V・1500Wのコンセントが必要となります。

(出典: 一条工務店「災害リスクへの備え」ページ)

気になるのは「ガソリン車からの給電も可能」というところです。ガソリン車に急速充電の差込口はありませんよね。ということは、この給電は充電ポートを使っていないことになります。

もう1つの「車側にAC100V・1500Wのコンセントが必要」と合わせて読むと、答えが見えてきます。これは車に付いている家庭用コンセント、いわゆるアクセサリーコンセントから電気を取り出す仕組みだということです。

一方、世間一般で言うV2Hはまったく別の仕組みです。車の急速充電ポート(CHAdeMO)と直流でやりとりする専用の機械で、分電盤に直結して家全体に電気を送ります。同じ「V2H」でも、規模がぜんぜん違います。

一条工務店のオリジナルV2Hシステムと一般的なV2H充放電器の違いを比較した図。一条は車のAC100V・1500Wコンセントからの給電、一般的なV2HはCHAdeMOポート経由の直流双方向・分電盤直結で規模が違うことを示している

紛らわしいのは、一条の公式サイト内でも表記が2種類あることです。同じ機能を指しているのに、ページによって呼び方が違います。

ページ表記
ichijo.co.jp/revolution/「オリジナル給電システム」
ichijo.co.jp/research/disaster_risk2023/「オリジナルV2Hシステム」

なお、この機器のメーカー名・型番・価格・標準装備かオプションかの区分は、公式サイトには一切記載がありませんでした。一条が他社のV2H充放電器を正式なオプションとして扱っているかどうかも、公式には確認できていません。ここは打ち合わせで直接聞くしかない部分です。

実際にYahoo!知恵袋には「既に車両給電用の外部電源(200V)を設置済みなのですが、その口を流用してV2Hを設置できますか」という一条施主の質問があります。答えは流用できません。V2Hは電力線に加えて通信線やCT線を通す必要があり、分電盤付近には切替盤も要ります。200Vの充電コンセントとは配線の構成そのものが違う設備です。

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もう1つの落とし穴:EVならどの車でも使えるわけではない

「EVを買えばV2Hが使える」と思っている方は多いと思います。でも実際は、使える車と使えない車がはっきり分かれます。

V2Hが対応しているのは、CHAdeMO規格の急速充電口を持つ車だけです。ニチコンの仕様書にも、CHAdeMOの双方向通信プロトコル(V2H protocol DC Version 2.1)に準拠していると明記されています。

つまり、こういうことになります。

車種急速充電の規格V2Hで家に給電
日産・三菱・トヨタ・ホンダなどの国産EV/PHEVCHAdeMO概ね可能
テスラNACS不可
BMW・ポルシェなど欧州勢の一部CCS不可

テスラは家庭用の蓄電を自社のPowerwallに寄せる戦略を取っていて、V2Hに対応する予定もありません。変換アダプターを使っても、双方向の放電はできないとされています。

ここが重要なのは、先行配管との関係です。「将来のためにV2H用の配管を入れておこう」と数万円かけて準備しても、10年後に選んだ車がテスラだったらその準備は使えません。V2Hを前提にするというのは、将来の車種選択をCHAdeMO対応車に縛るという意味でもあります。

なお、国産車であっても車種ごとに対応可否が分かれるので、具体的な車を想定しているならメーカーか施工店に確認してください。

損得の分かれ目は「昼間に車が家にあるか」だった

V2Hの経済性を試算すると、金額の大小より先に効いてくる条件がありました。太陽光で発電した電気を車に貯めるには、発電している時間帯(昼間)に車が家にいる必要がある、ということです。

据置型の蓄電池は当たり前ですが常に家にあります。でも車は、通勤で使っていれば昼間はいません。つまり太陽光がいちばん発電している時間に、貯める先がないという状態になります。

V2H機器単体の投資回収年数の比較図。昼間に車が不在の場合は補助金100万円でも約52年、昼間に車を置ける場合は補助金100万円で約8.6年、蓄電池2台目は約13年

数字を出す前に、前提を先に書いておきます。他の記事の回収年数と比べるときは、この前提が揃っているかを見てください。

  • 卒FIT後(売電8.5円/kWh・買電33.48円/kWh)で統一
  • V2H費用は本体(ニチコンVSG3・税込140.8万円)+工事40万円=約181万円
  • 便益は「V2Hで増えた自家消費分」のみ。EV化の燃料費削減は含めない
  • EVバッテリーの劣化コストは、この表には含めていない(後述)
条件補助金なし補助60万円補助100万円
昼間に車が不在(通勤で毎日使う)約116年約77年約52年
昼間に車を自宅に置ける約19年約13年約8.6年
参考:蓄電池2台目(約72万円)約13年

通勤で車を使う前提だと、補助金が100万円出たとしてもV2H機器の回収は機器の寿命を大きく超えます。同じ「自家消費を増やす」目的なら、蓄電池2台目の方が年間の便益で約39,000円多いという結果でした。

ここは誤解されやすいので補足すると、この39,000円は「V2Hより蓄電池の方が年3.9万円お得」という意味ではありません。あくまで年間に生む便益の差で、初期費用の差(約72万円と約181万円)は別に考える必要があります。

逆に、在宅勤務などで昼間に車を自宅に置ける人は条件がまったく変わります。冒頭で紹介したSNSの投稿で、実際にV2Hを運用している方が「V2Hは昼間EVあるならめちゃくちゃ利用価値高いです」と書かれていたのですが、試算してみるとまさにその通りでした。

つまりこれは、機器の良し悪しの話ではなく生活パターンの話なんです。

V2Hが得になる4つの条件

試算から整理すると、次の4つが揃ったときにV2Hの条件が良くなります。

  1. 昼間に車を自宅に置ける(在宅勤務・車を通勤に使わない)
  2. 卒FIT後、または売電単価が下がる期間に入っている
  3. 補助金が60〜100万円出る
  4. どうせEVを買う(車は移動手段として元々必要)

この試算がどこまで信用できるか

回収年数を出しておいて何ですが、この数字には根拠の弱い部分があります。記事の最後で「業者の数字は前提を確認しよう」と書く以上、自分の前提も開示しておきます。

いちばん効いているのは「V2Hから家へ1日に何kWh戻すか」という値です。ここは公式資料がなく、パワコン容量と夜間消費量から置いた推定値(在宅なら1日12kWh)を使っています。この値を変えると結論はこう動きます。

1日の放電量回収年数(在宅・卒FIT・補助100万円)
12.0kWh(試算で採用)約8.6年
10.0kWh約10年
8.0kWh約13年
6.0kWh約17年

1日12kWhというのは、一条の据置蓄電池(実効6.02kWh/日)の2台分に相当する量を、毎日EVから家に戻す想定です。さらに年1万km走るなら、車には走行分と合わせて1日あたり約16kWhを入れ続ける必要があります。冬や雨の日に太陽光の余剰がそこまで出ない日は、当然この通りにはなりません。

もう1つ、電気を出し入れするときのロス(変換ロス)も往復90%という有利めの前提で計算しています。ここは調べ直したところ、ニチコンの公式ページにVSG3のAC-DC変換効率は85%と明記されていました。充電と放電で2回変換するので、往復では0.85×0.85でおよそ72%になります。

この公式値で計算し直すと、上の表の数字は少し悪くなります。

条件往復90%(当初の試算)往復72%(公式値ベース)
在宅・補助100万円約8.6年約9.9年
在宅・補助60万円約13年約15年

補助60万円の場合、蓄電池2台目(約13年)を下回る結果になります。公式の数字を使うと、在宅であってもV2Hが明確に有利とは言い切れません。

要するに、この記事の「在宅なら8.6年」という数字も、前提を少し変えれば15年にも17年にもなります。他の記事の数字を鵜呑みにしないのと同じように、この記事の数字も前提込みで見てください。

見落とされがちなコスト:EVバッテリーの劣化

ここまでは電気代の差額だけで損得を計算してきましたが、実はもう1つ勘定に入れるべきものがあります。EV側のバッテリーが減る分のコストです。

V2Hは車のバッテリーを家庭用の蓄電池として使う仕組みなので、当然そのぶん充放電の回数が増えます。在宅ケース(年3,754kWhを家に放電)で計算すると、こうなります。

項目60kWhのEVの場合
走行による充放電(年1万km)年およそ34回分
V2Hによる充放電年およそ63回分
V2H起因の割合全体の約65%

つまりV2H運用は、走ることの約2倍の負担をバッテリーにかけている計算になります。

ここで注意したいのが、比較相手である一条の据置蓄電池との違いです。一条の蓄電池はリン酸鉄リチウムで、メーカー保証は15年で容量60%以上。ある施主の公開データでは3年経過時点で残存率99%という結果も出ています。一方、EVのバッテリーは車種によって化学組成も保証条件も違います。

「蓄電池2台目 vs V2H」を比べるとき、片方は劣化をほぼ気にしなくてよく、もう片方は数百万円する車の価値に関わる、という非対称性があるわけです。

では保証はどうなるのか。ここが気になったので調べたのですが、日産のEVバッテリー容量保証は「8年16万km」で、容量計が8セグメントまで減った場合に9セグメント以上へ復帰させる、という内容でした。公式ページを読む限り、V2Hや外部給電の使用を保証の対象外とする記載は見当たりません。日産自身がV2Hを推奨してきた経緯もあるので、V2Hを使ったから保証が切れる、という単純な話ではなさそうです。

とはいえ保証は「容量計が8セグメントに減ったら」という基準なので、その手前の緩やかな劣化は保証の外です。走行距離の条件(16万km)も、V2Hで充放電を増やしても伸びるわけではありません。

正直に書くと、EVバッテリーのサイクル寿命の公称値はメーカーが公表していないことが多く、劣化コストを一次情報で正確に金額化することはできませんでした。ただ、仮にバッテリー交換費用と寿命から粗く見積もると、年2〜4万円規模のコストになる可能性があります。在宅ケースの年間便益(約94,000円)の2〜4割を食う水準です。

これを差し引くと、補助100万円の在宅ケースでも回収は8.6年から12〜17年程度に伸び、蓄電池2台目(約13年)との差はほぼなくなります。

金額化できないからこそ、「試算には入っていないマイナス要因がある」ということだけは押さえておいてください。実際に検討する段階では、乗る予定の車種のバッテリー保証条件を必ず自分で確認することをおすすめします。

「EVで燃料費が浮くからV2Hも元が取れる」は成り立たない

これも試算していて気づいた点です。

EVにすると燃料費が下がります。年間10,000km・燃費15km/Lのガソリン車と比べると、夜間充電で年間約64,000円、卒FIT後に太陽光の余剰で充電するなら年間約97,000円の削減になりました。

かなり大きな金額です。ただし、この削減は200Vの普通充電だけで得られます。V2H機器は必要ありません。

EV化による燃料費削減とV2H機器が生む価値を分離した図。燃料費削減の年6.4〜9.7万円は200V普通充電で得られる部分で、V2H機器が追加で生むのは車から家へ電気を戻す部分だけであることを示している

V2H機器が追加で生む価値は「車から家へ電気を戻す」部分だけです。燃料費の削減額をV2Hの投資回収に足してしまうと、実態より良い数字が出てしまいます。ここは分けて考える必要があります。

金額に換算できない価値:停電時のバックアップ

ここまで金額の話ばかりしてきましたが、V2Hの価値は損得だけでは測れません。停電したときに動かせる時間が、据置蓄電池とは桁違いになります。

1日の消費電力量蓄電池7.04kWhEV 40kWhEV 60kWh
15kWh(通常期の想定)約0.4日約1.9日約2.8日
30kWh(真冬に暖房を強く使う想定)約0.2日約0.9日約1.4日

※EVは走行用に容量の3割を残す前提。1日の消費電力量は推定値です。

ここで期待を上げすぎないように書いておくと、「真冬に全館床暖房をつけたまま数日持つ」とまでは言えません。暖房を強く使う日は60kWhのEVでも1日半程度です。冬の停電は日射も弱いので、太陽光での継ぎ足しもあまり期待できません。

それでも、蓄電池1台では半日も持たないところが1〜3日に延びるという差は大きいと思います。この安心をいくらと見るかは金額計算の外にある判断で、回収年数だけでV2Hを切り捨てるのは乱暴だと感じました。

実際にV2Hで成果を出している施主のデータ

冒頭のSNSの会話に出てきた北海道の一条施主の方が、3年分のエネルギー費を公開されていました。個人が特定される形での転載は避けて、傾向だけ紹介します。

年間収支(売電 − 電気・ガス・燃料)
2024年約+5,800円(プラス)
2025年約−2,400円(ほぼゼロ)
2026年1〜7月約−20,600円

春から秋にかけてはガソリン代も外部充電料金もゼロという月が続いていて、太陽光の余剰でそのまま車を走らせている状態です。V2H+EVの価値が最もはっきり出る形だと思います。

ただし、この数字をそのまま一般化することはできません。理由が4つあります。

  1. この方は電力会社のプランを年内に何度も切り替えて最適化されている。V2H単体の効果ではない
  2. 北海道は冬の買電が非常に大きい。1月で月4万円を超える月がある
  3. 都市ガス併用の家で、オール電化の家とは条件が違う
  4. 2026年は前年同期より売電が3割以上減り、収支もマイナス幅が広がっている

4番目は特に大事なところです。良い年の数字だけを取り出せば「V2Hでエネルギー費ゼロ」と書けてしまいますが、同じ設備でも年によって結果は動きます。売電単価の推移や電力プランの改定に左右される部分が大きいということでもあります。

もう1つ、機器についての補足です。この方が導入されたのはニチコンVCGシリーズのプレミアムタイプで、JET認証の終了に伴い2026年2月で生産を終えています。同じものを今から買うことはできません。

現在の選択肢は次のような状況です。

メーカー・製品状況
ニチコン VSG3現行。税抜128万円(重塩害モデル140万円)
ニチコン VCGシリーズ全機種生産終了
パナソニック eneplat現行。蓄電池とV2Hの一体型
ホンダ V2H Stand現行。2026年5月発売
デンソー DNEVC-D60752026年2月で製造終了(在庫限り)

ネット上には「49.8万円〜」という価格を載せている記事もありますが、この数字はメーカー公式では確認できませんでした。ニチコン公式の希望小売価格は、生産終了のVCGで89.8万円〜(税別)、現行のVSG3で128万円(税抜)です。

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我が家がV2Hを見送った理由

ここまでの調査を踏まえて、あらためて我が家の判断を書いておきます。

いま我が家はガソリン車に乗っていて、EVを本格的に購入するのは10年、20年後になるだろうと予想しています。10年経てば新しい仕組みや制度も出てくるはずなので、必要になったタイミングで必要なものを買う、というスタンスです。

「今はいらないけど将来必要かもしれないから買っておく」は、無駄が多くなる傾向にあると考えています。なので特に何もしない、という対応を取りました。

調べたあとでも、この判断は変えなくていいと思っています。理由は次のとおりです。

  • V2Hの価値が出る条件(昼間に車が家にある・売電単価が下がっている・高額補助金)が、現時点の我が家に揃っていない
  • 埼玉県は2026年度に県のV2H補助金がなくなった(後述)
  • 現行機種のVSG3は税抜128万円で、前世代より価格が上がっている
  • 10年後にどの規格の車に乗るか分からない以上、CHAdeMO前提の準備をする判断がしにくい

ただしこれは「V2Hはやめたほうがいい」という話ではまったくありません。条件が揃う人には十分価値がある設備です。実際に成果を出している方がいるのが何よりの証拠だと思います。

【詳細】2026年度の補助金と地域差

ここからは制度の細かい話になります。金額を検討する段階の方向けです。

国の補助金は増額されたが、予算の消化が早い

2026年度は補助上限が大きく増額されました。

項目前年度2026年度
機器費の上限50万円75万円
工事費の上限15万円55万円
合計の最大65万円130万円

補助率も前年度の3分の1以内から2分の1以内に引き上げられています。

よく見る「130万円」は単一の上限ではなく、機器費と工事費を合計した最大額です。機器側は型式ごとの上限(44.9万〜75万円)と、購入費(税抜)の2分の1以内の低い方になるので、130万円満額に届くのは高価格帯の機種に限られます。

なお「個人宅だから130万円」という説明を見かけますが、正確にはこの上限は公共施設・災害拠点以外で共通です。個人宅に固有の枠ではありません。

2026年度V2H補助金の予算消化状況を示す図。配分額約55億円に対し8月4日時点で予算残額約25億円となり、開始から3週間で約55パーセントが消化され、9月30日の期限前に受付終了する可能性があることを示している

注意したいのは予算の消化スピードです。次世代自動車振興センターが2026年8月4日に公表したお知らせによると、配分額約55億円に対して予算残額が約25億円になっています。7月17日の受付開始から3週間ほどで半分以上が使われた計算です。

このお知らせには「交付申請額の累計が予算額に達した場合は、交付申請受付期限(令和8年9月30日)を待たずに受付を終了いたします」と明記されています。さらに先着順で、予算額に達した日以降に到着した申請は受理されず無効になります。

地域差が極端に大きい

ここは住んでいる場所で結論が変わる部分です。

地域2026年度のV2H補助
埼玉県(県)なし(令和8年度は事業の実施予定なし)
さいたま市10万円
川越市3万円(太陽光との同時設置が条件)
東京都通常50万円/条件を満たせば最大100万円

埼玉県は県レベルのV2H補助金が2026年度は実施されません。つまり埼玉県で新築にV2Hを入れる場合、使えるのは国と市町村の補助金だけになります。市町村の額は自治体ごとにかなり違うので、お住まいの市のページを直接確認してください。

東京都は少し仕組みが複雑です。通常の申請は助成対象経費の2分の1・上限50万円で、太陽光発電設備とEV/PHVとV2Hが揃う場合に限って全額補助・上限100万円まで増額されます。しかも国の補助金額を差し引いた額が上限で、計算して0円になる場合は申請できません。都内の戸建てのみが対象で、区分登記の建物や共同住宅は対象外。契約前の事前申込が必須という点も見落としやすいところです。

「補助金が手厚いから今のうちに」という判断は、地域によって当てはまり方がまったく違います。

新築で見落としやすい制約

国の応募要領を読むと、新築特有の注意点がありました。

  • 発注と施工開始は交付決定日以降でないと補助対象外(支払も原則同様。ただし前払金の一部は交付決定前でも可)
  • 「将来用の配線配管等」は補助対象外
  • 新築時の分電盤の設計変更・幹線変更も補助対象外
  • 「新品」の定義が厳しく、メーカー保証書の保証開始日も交付決定日以降である必要がある

2つ目が重要です。先行配管そのものには補助金が使えません。

そして新築で本当に怖いのは1つ目と4つ目です。家づくりのスケジュール上、交付決定を待たずに発注が進んでしまうと、それだけで補助対象外になります。V2Hを新築と同時に入れるつもりなら、補助金の申請タイミングを工程表に組み込んでおく必要があります。

FITが階段型になっている

売電単価の前提も変わっています。単一の単価ではなく、途中で下がる階段型です。

区分前半後半
住宅用(10kW未満・10年)1〜4年目 24円5〜10年目 8.3円
屋根設置(10kW以上・20年)1〜5年目 19円6〜20年目 8.3円

ここで誤解されやすい点を1つ整理しておきます。

「階段型は途中で自家消費に切り替えられない」という説明を見かけますが、正確ではありません。自家消費はいつでもできます。そもそもFITは余剰売電の制度なので、発電した電気を自宅で使うことに制限はありません。

できないのは、FIT認定を維持したまま制度を抜けて、別の買取業者に高く売ることです。前半に高い単価を受け取っておいて、後半になったら制度を離脱するという「いいとこ取り」を防ぐ設計になっています。

むしろ話は逆で、後半に8.3円まで下がるからこそ、売るより自宅で使った方が得になります。V2Hや蓄電池の価値が上がるのはこのタイミングです。

なお10kW以上50kW未満の場合は、自家消費30%以上が認定要件なので全量売電はできません。V2Hの経済性は売電単価と買電単価の差で決まるので、自分の認定区分がどうなっているかは確認しておく価値があります。

【詳細】先行配管という選択肢

「今は入れないが将来の可能性を残したい」という場合の現実的な方法です。

屋外の設置予定地から分電盤付近まで、空の配管を通しておきます。ニチコンの公式FAQでは「PF管Φ22×3本」と案内されており、デンソーの参考資料でも電力線2本+通信線・CT線1本の計3本という構成で一致しています。

ただし機種によって推奨される径や本数は変わる可能性があります。Xで先行配管を勧めていた施主の方自身も「今のVSGシリーズは配管の推奨径や本数が違うかもしれないので、メーカーか施工店に確認した方がいい」と書かれていました。頼むときは、想定する機種を決めたうえで確認するのが確実です。

V2H先行配管の構成図。屋外の設置予定地から分電盤付近まで空配管3本を通し、屋内側に切替盤のスペースを確保する必要があることを示した図。配管だけでは足りない点を強調している

費用については、施主の方が公開している記録で配管3本と基礎先行配管を合わせて4万円台という例がありました。ただしこれは数年前の個人の記録なので、現在の一条のオプション価格は打ち合わせで確認が必要です。

見落としやすいのが、配管だけでは足りないという点です。V2Hは屋外の本体だけでなく、屋内側に切替盤や専用分電盤を置くスペースが必要になります。先行配管を頼むときは、この設置スペースの確保もセットで相談しておく必要があります。

さらに、V2Hの機種選びには「全負荷型か特定負荷型か」という論点もあります。VSG3は全負荷200V対応で家全体をバックアップできますが、特定負荷型は停電時に給電する回路をあらかじめ決めておく方式です。エアコンやIHなど200V機器が使えないケースもあるので、停電時に何を動かしたいかで選ぶ機種が変わります。

現行のV2Hは電力会社への系統連系の申請と許可が必要な点も、導入までの期間に関わってきます。

もう1つ、一条の家で注意したい点があります。高気密・高断熱の住宅なので、あとから壁や基礎を貫通する工事は気密の欠損リスクを伴います。実際に、気密性の低下を懸念して先行配管を見送った北海道の施主の方が、入居後に「超絶後悔ポイントの一つ」と書かれているケースもありました。

逆に、気密を理由に見送るという判断もあり得るので、ここは設計担当と相談する部分だと思います。

【詳細】業者の数字がバラバラな理由

V2Hを調べていると、同じ論点なのにサイトによって数字が大きく違うことに気づきます。

論点見つかった数字の幅
投資回収年数4〜5年/約12年/20年以上
変換ロス往復10〜20%/約40%/実測60〜70%
導入費用機器90〜182万円/機器+工事100〜300万円

回収年数が4〜5年から20年以上まで散らばっています。これは誰かが嘘を書いているというより、前提条件が全然違うからです。

ちなみに変換ロスについては、メーカーが答えを出しています。ニチコンはVSG3の変換効率を85%と公表しているので、充電と放電の2回分で往復およそ72%。「往復のロスは10〜20%」と書いてある記事は、この公式の数字よりだいぶ甘く見積もっていることになります。

ここまで読んでいただいた方はもうお分かりだと思いますが、V2Hの回収年数は「昼間に車が家にあるか」「FITの何年目か」「補助金がいくら出るか」で大きく動きます。この前提を書かずに「回収5年」と書けば、条件が良いケースだけを切り取ることができてしまいます。

これはこの記事も例外ではありません。だから前提と推定値を明示しましたし、推定を変えたときにどう動くかも載せました。

V2Hの記事や営業資料を読むときは、数字そのものより「どんな前提で計算しているか」を確認するのがおすすめです。前提が書かれていない数字は、良い条件を選んで作られている可能性があります。

まとめ

  • 一条の「オリジナルV2Hシステム」は、注記から読む限り車のAC100Vコンセントから給電する仕組み。ニチコン等のV2H充放電器とは別物
  • V2Hが使えるのはCHAdeMO規格の車だけ。テスラなどは対象外で、将来の車種選択が縛られる
  • 200Vの充電コンセントとV2Hも別物。既設の200Vを流用してV2Hは付けられない
  • 損得の分かれ目は金額ではなく「昼間に車が家にあるか」。通勤で毎日車を使うなら蓄電池2台目の方が有利
  • ただし回収年数は推定値に左右される。この記事の「在宅なら8.6年」も前提が変われば15〜17年になる
  • 変換効率はニチコン公式で85%(往復およそ72%)。これを使うと在宅・補助60万円では蓄電池2台目を下回る
  • EVバッテリーの劣化コストは試算に入れにくいが無視できない。据置蓄電池とは土俵が違う
  • EV化の燃料費削減は200V普通充電で得られる。V2Hの投資回収の根拠にしてはいけない
  • 停電時のバックアップは蓄電池1台と比べて桁違い。ここは金額の外で判断する部分
  • 国の補助金は増額されたが予算の消化が早く、期限前に終了する可能性がある
  • 埼玉県は2026年度に県補助が実施なし。地域差が極端に大きい
  • 将来の可能性を残すなら先行配管。ただし補助金は使えず、屋内の切替盤スペースも必要

我が家は見送りましたが、これは「V2Hに価値がない」という話ではありません。昼間に車を家に置ける方、卒FIT後の活用を考えている方、補助金が手厚い地域の方には十分に検討価値のある設備です。

大事なのは、自分の車の使い方から逆算することだと思います。

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関連記事として、太陽光と蓄電池の考え方は太陽光13kW+蓄電池7kWhの実績データ、東京都で蓄電池2台を検討する場合は東京都なら蓄電池2台が正解?、屋根への搭載量の考え方は太陽光の最大積載量を狙う理由でも解説しています。

参考にした一次情報

よくある質問

一条工務店の「オリジナルV2Hシステム」は普通のV2Hと同じものですか?
別物とみられます。一条公式サイトの注記には「車側にAC100V・1500Wのコンセントが必要」「ガソリン車からの給電も可能」と書かれています。ガソリン車には急速充電ポートがないため、CHAdeMO経由の充放電ではあり得ません。車のコンセントから電気を取り出す外部給電の仕組みと読むのが自然です。ニチコンなどのV2H充放電器は車の急速充電ポート(CHAdeMO)と直流でやりとりする分電盤直結の機器で、出力の規模が違います。検討時はどちらの話をしているのか必ず切り分けてください。
EVならどの車種でもV2Hが使えますか?
使えません。V2Hが対応しているのはCHAdeMO規格の急速充電口を持つ車種です。テスラはNACS、BMWやポルシェなどはCCSを採用しており、日本のV2Hでは使えません。変換アダプターを付けても双方向の放電はできません。V2Hを前提に配管などの準備をするなら、将来の車種選択がCHAdeMO対応車に縛られる点を先に理解しておく必要があります。
蓄電池2台目とV2H、どちらを選ぶべきですか?
車の使い方で結論が変わります。通勤で毎日車を使うなら、昼間に車が家にないため太陽光の余剰を車に貯められず、常に家にある据置蓄電池の方が有利という試算結果になりました。逆に在宅勤務などで昼間に車を自宅に置ける場合はV2Hの条件が良くなります。ただしメーカー公表の変換効率(往復およそ72%)で計算し直すと、補助金60万円のケースでは蓄電池2台目を下回ります。EV側のバッテリー劣化も考えると、在宅であってもV2Hが明確に有利とは言い切れません。まず自分の車の使い方から逆算するのが判断の順序です。
EVにすれば燃料費が浮くので、V2Hも元が取れますか?
この2つは分けて考える必要があります。EV化による燃料費の削減は200Vの普通充電だけで得られるもので、V2H機器の費用は不要です。V2Hが追加で生む価値は「車から家へ電気を戻す」部分だけなので、燃料費の削減額をV2Hの回収根拠にすると判断を誤ります。
新築時にやっておくべき準備はありますか?
将来V2Hを入れる可能性があるなら、屋外の設置予定地から分電盤付近までの空配管(先行配管)を仕込む方法があります。ニチコンの公式FAQではPF管Φ22を3本と案内されています。ただし屋内側に切替盤を置くスペースの確保も必要で、配管だけでは足りません。なお国の補助金は「将来用の配線配管等」を対象外と明記しているため、先行配管に補助金は使えません。

ろれさん

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一条工務店グランスマートで埼玉県に21坪の平屋を建てた施主。家づくりの経験をYouTube・ブログ・Webツールで発信中。

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