家の引き渡しが近づくと、そろそろ決めないといけないのが電力会社です。

ろれさんはまだ契約していません。ただ、調べた結果としてバッテリーオクトパスを選ぶつもりでいます。

理由は単純で、一条施主が公開している実測の買電量で試算したら、年間で4.6万円の差がついたからです。

結論:ろれさんはバッテリーオクトパスを選びます

一条施主の実測データ(年間買電2,962kWh)をそのまま各社の単価に当てはめた結果がこれです。

プラン年間の負担額東京電力との差
東京電力 スマートライフ128,121円—
一条でんき126,801円−1,320円
auでんき+自宅セット割2回線101,690円−26,431円
バッテリーオクトパス(6kW)82,213円−45,908円

auでんきの行だけは性質が違います。電気代そのものは東京電力とほぼ同額で、下がるのはスマホ代のほう。電気と通信を合わせた家計の負担額として並べるために、この表では割引後の数字を置いています。電気代だけで比べるなら、auでんきは東京電力と横並びです。

一条工務店の家の電力プラン別年間電気代の試算結果。実測買電2,962kWhで東京電力スマートライフ128,121円、一条でんき126,801円、auでんき+セット割2回線101,690円、バッテリーオクトパス6kW 82,213円。オクトパスが東京電力より年45,908円安い

東京電力から乗り換えたときに下がる額が、一条でんきなら年1,320円、バッテリーオクトパスなら年45,908円。同じ乗り換えでも、浮く金額がまるで違います。

差の出どころも別です。一条でんきは単価が東京電力と同一で、基本料金だけが安い。オクトパスは単価そのものが夜間で約10円安く、買った量に比例して差が開きます。

選択肢ごとの立ち位置を並べると、こうなります。

ろれさんがバッテリーオクトパスを選ぶ理由を3社比較で示した図。一条でんきは電力量料金が東京電力と完全同一で差は基本料金11円/kVAのみ、タダ電は約款で太陽光・蓄電池のある家が申込み対象外、バッテリーオクトパスは蓄電池所有が条件で年45,908円安い

しかもこの順位は、夜間に買う電気の割合を50%から80%まで動かしても一度も入れ替わりませんでした。蓄電池の使い方が多少ぶれても結論が変わらない、という意味です。

ただし前提が3つあります

先に留保を書いておきます。ここを読まずに真似すると外します。

  1. 蓄電池7kWh 1台であること。2台(14kWh)にすると買電がほぼ消えて、プラン選びの効果自体が小さくなります
  2. 燃料費調整の実績は未確認。オクトパスは基準燃料価格が東京電力と違うので、上乗せ額が変わります
  3. FIT最初の4年は売電優先のほうが有利。自家消費を増やす運用は5年目以降です

それぞれ後で詳しく書きます。

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なぜオクトパスなのか — 夜間が約10円安い

バッテリーオクトパスは、蓄電池を持っていることが契約条件のプランです。公式の定義書を確認した範囲では、蓄電池の所有そのものを適用条件に掲げているプランはこれだけでした。

項目バッテリーオクトパス東京電力スマートライフ
昼(6時〜24時・0〜1時)24.50円/kWh35.76円/kWh
夜(1時〜6時)17.85円/kWh27.86円/kWh
基本料金1kWにつき1日10.25円(実量制)10A・1kVAにつき311.75円
条件定置用蓄電池の所有夜間蓄熱式機器の使用
バッテリーオクトパスと東京電力スマートライフの単価比較図。昼は24.50円対35.76円、夜は17.85円対27.86円でバッテリーオクトパスが約10円安い。ただし燃料費調整の基準燃料価格が44,200円と86,100円で異なるため単価だけの比較はできないという注意付き

夜間が17.85円で、東京電力より10.01円安い。年間3,000kWh近く買うので、この10円の差がそのまま年4.6万円になります。

基本料金が実量制である点も、蓄電池持ちには効きます。30分ごとの使用電力量のピークで基本料金が決まる仕組みなので、蓄電池でピークを削れば基本料金も下がります。東京電力のアンペア契約では、いくらピークを削っても基本料金は変わりません。

裏を返すと、実量制は一度大きなピークを作るとその値を11か月引きずります。蓄電池が空のときに暖房と給湯とIHが重なるような日が一度あると、その影響が1年近く残ります。

燃料費調整の基準価格が違う点だけ注意

ここが唯一の不確定要素です。燃料費調整の基準燃料価格が、東京電力86,100円に対してオクトパスは44,200円。基準が低いということは、同じ燃料価格でも上乗せされる調整額が大きくなります。

どこまで効くのかを逆算してみました。

契約電力年間の差逆転に必要な燃調差
6kW45,908円15.50円/kWh
8kW38,425円12.97円/kWh
10kW30,943円10.45円/kWh

燃料費調整単価は通常プラスマイナス5円/kWh程度のレンジで動きます。10円を超える差がつき続けることは考えにくいので、結論はまず覆らないはずです。

とはいえ実績値を見たわけではないので、契約前に直近12か月の燃調実績を確認するつもりです。ここは断定を避けておきます。

なお、バッテリーオクトパスはメニュー変更後1年間は他のメニューに移れません。試しに入ってみる、がしづらい設計です。

一条でんきの差は、月110円しかなかった

一条工務店で建てると「一条でんき」というサービスを案内されます。名前から「一条工務店の電力会社」だと思っていたのですが、中身を確認すると少し違いました。

正式名称は一条でんき powered by idemitsu。電気を供給しているのは出光興産で、一条工務店はあいだに立つ媒介事業者です。一条のグループ会社が電気を売っているわけではありません。

東京エリアのオール電化プランで、東京電力のスマートライフS/Lと並べてみます。

項目一条でんき東京電力スマートライフS/L
基本料金(10A・1kVAごと)300.75円311.75円
昼(6時〜翌1時)35.76円/kWh35.76円/kWh
夜(1時〜6時)27.86円/kWh27.86円/kWh
一条でんきと東京電力スマートライフの料金比較図。基本料金は一条でんき300.75円に対し東京電力311.75円で11円の差。電力量料金は昼35.76円・夜27.86円で両者完全に同一。10kVA契約で月110円・年1,320円の差になる

電力量料金が1円単位まで一致しています。時間帯の区切りも同じ1時〜6時です。

違うのは基本料金だけで、1kVAあたり11円。10kVA契約なら月110円、年間1,320円です。出光の公式説明も「10kVA契約で毎月110円おトク」と書いていて、この110円が差のすべてということになります。

「一条専用だから特別に安い」と身構えていたので、ここは拍子抜けするところでした。電気代そのもので選ぶサービスではない、というのが素直な読み方だと思います。

一条でんきの価値は売電側にある

では一条でんきの強みはどこかというと、売電の買取単価です。

FITの10年が終わったあと(卒FIT後)の買取単価が、東京エリアで買取のみ9.5円/kWh、電気契約とセットなら11.5円/kWh。東京電力の再エネ買取標準プランが8.50円/kWhなので、セットなら3円の差がつきます。

ここは別の記事で詳しく整理しているので、売電の仕組みが気になる方はそちらを見てください。

ただ、卒FITは入居から10年後の話です。買取単価は年度ごとに見直されるので、今の11.5円が10年後も続く保証はありません。

10年後の買取単価のために、今の電気代で年4.6万円を諦める。そう並べると、少なくとも入居直後の選択としては合わないと判断しました。卒FITが近づいた時点で改めて比較すればいい話です。

タダ電は、約款で正面から塞がれていた

一条の施主のあいだで一時期かなり広まったのが「タダ電」でした。

月5,000円分までの電力量料金が無料になるサービスで、太陽光と蓄電池があれば買う電気そのものが少ないので、無料枠に収まってしまう。それで毎月の電気代がほぼゼロになる、という使われ方をしていました。

今はもう使えません。それも「なんとなく厳しくなった」ではなく、約款に名指しで書かれています。

約款に書いてあること

電気需給約款 第6条(2026年7月1日改訂)

なお、蓄電池または太陽光発電設備が設置された地点および通常の居住実態が確認できない地点ならびに法人名義での契約、需給場所が事務所・オフィス・店舗その他事業の用に供する場所については、当社の電気需給契約の申込み対象外とします。

重要事項説明書「2 対象者」

・需要場所に蓄電池または太陽光発電設備が設置されていないこと

申し込みの入口で弾かれる、というだけではありません。契約したあとに発覚した場合も解約の対象になります。

約款 第34条【解約等】

(7) 需要場所に蓄電池または太陽光発電設備が設置されていた場合 (8) 再使用または第三者への供給を目的とし、当社が供給した電気を蓄電池等により蓄電していた場合

(8) がなかなか直接的で、安い枠で買った電気を蓄電池に貯めて使い回す行為が名指しで禁止されています。

タダ電の約款で太陽光・蓄電池がある家が対象外になっていることを示す図。電気需給約款第6条で申込み対象外、重要事項説明書の対象者条件、約款第34条(7)(8)で解約事由の3箇所に明記されている

いつから使えなくなったのか

「対策された」という話はよく見かけるのですが、時期がはっきりしなかったので、Wayback Machine で過去の約款を1版ずつ突き合わせました。

約款の版第6条の記述
2025年5月13日実施記述なし
2025年9月30日実施「蓄電池が設置された地点」を追加
2026年7月1日改訂(現行)「蓄電池または太陽光発電設備」に拡大

二段階でした。

蓄電池がNGになったのが2025年9月30日の改定から。一条の標準的な太陽光+蓄電池の構成は、この時点で弾かれています。

太陽光発電設備が追加されたのが2026年7月1日の改定から。蓄電池なしで太陽光だけの家も、ここで対象外になりました。

なお、比較サイトのなかには「2025年6月26日の改定で蓄電池住宅が契約不可になった」と書いているものがありますが、6月時点のアーカイブには該当の記述がありませんでした。実測と食い違うので、日付は9月30日を採っています。

仮に入れたとしても、もう無料にはならない

もうひとつ押さえておきたいのが、無料枠そのものが痩せてきていることです。

時期無料枠単価
2023年5月〜8月10,000円まで65円/kWh
2023年9月〜6,500円まで65円/kWh
2024年1月〜5,000円まで70円/kWh
2026年7月〜5,000円まで(+最低料金560円)70円/kWh

2026年7月の改定で、契約19か月目以降は使用量がゼロでも毎月560円の最低料金がかかるようになりました。約款にもはっきり書かれています。

※9 お客さまがタダ電プランをご契約後19か月目以降の電気料金については、有料時基本料金に代えて、電気の使用量の有無にかかわらず、毎月560円の最低料金を請求いたします。

設備の条件をクリアできたとしても「完全に0円」という当初のうまみは、今はもう残っていません。

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N式を使うなら、結論が変わります

一条の施主のあいだで知られている「N式」という運用があります。これを採用するかどうかで、選ぶべきプランが変わります。

N式は、一条施主のインフルエンサー「なあたン」氏が提唱した、太陽光の自家消費を最大化して買電量を減らす運用の通称です。一条工務店や電力会社の公式手法ではありません。

中身は3つです。

  1. 基本料金0円のプランに切り替える
  2. エコキュートを昼に沸き上げる(深夜沸き上げをやめる)
  3. 蓄電池を「節エネ」モードにして、使い切りレベルを低めに設定する
N式の3要素と、通常運用との違いを示した図。N式は基本料金0円プラン・エコキュート昼沸き上げ・蓄電池を節エネモードにして自家消費を最大化する。深夜が安いプランを前提とする通常運用とは方向が逆になる

ここで気づくのは、N式は「夜間の安い電気を使う」の逆をやっているということです。昼に沸かして昼に貯めるので、深夜が安いプランの旨みを使いません。だからこそ基本料金0円のプランと組み合わせます。

N式が効くのは5年目以降

そしてもうひとつ大事なのが、FIT最初の4年はN式の経済メリットが小さいことです。

自家消費1kWhの価値は「買わずに済んだ電気代」、売電1kWhの価値は「売電単価」。この2つを比べると、どちらを優先すべきかが決まります。

時期売電単価東京電力の夜間単価どちらが有利か
1〜4年目24円/kWh27.86円/kWh差3.9円。蓄電池の損失を考えるとほぼ拮抗
5〜10年目8.3円/kWh27.86円/kWh自家消費が圧倒的に有利
卒FIT後9.5〜11.5円/kWh27.86円/kWh自家消費が有利

最初の4年は売電24円が高いので、売れる電気はむしろ売ったほうがいい。実際に「深夜電力が売電単価を下回るまでN式は採用しない」と判断している施主のブログもありました。

蓄電池のメーカー(ダイヤゼブラ電機)も同じ整理をしています。EIBS7 の運転モード解説で、売電優先の「ノーマル」モードを「電気代より売電単価が高いご家庭におすすめ」とし、FIT期間中か終了後かで自由にモードを変更できると案内しています。

つまりモードは後から変えられるので、契約時に決め切る必要はありません。ろれさんは最初の4年は売電を優先し、5年目に切り替える前提で考えています。

混同しやすい「F式」は別物

ついでに書いておくと、よく並べて語られる「F式」は電気代の手法ではありません。

F式はフエッピー氏が提唱した、エアコン1〜2台で家全体を24時間除湿する冷房の運用方法です。電力プランや蓄電池の設定とは無関係で、提唱者も別人です。

「使う側の工夫(F式)」と「賄う側の工夫(N式)」という、別々の話だと整理しておくと混乱しません。

携帯キャリアとのセットは、オール電化だと選択肢が少ない

電気をキャリアとセットにする割引も検討しましたが、オール電化では思ったほど選べませんでした。

ソフトバンクとドコモは、そもそも入れない

ワイモバイルの「おうち割 でんきセット(E)」は回線1つあたり月1,100円と魅力的な額ですが、オール電化住宅では到達できません。割引の前提になる「おうちでんき」に申し込めないからです。公式FAQにこう書かれています。

現在はオール電化住宅向けプランのご用意がありません

ドコモも同様で、公式FAQに「オール電化向けのメニューをご用意しておらず、時間帯に応じた料金変動がないため、特に夜間帯は料金が割高になる場合があります」とあり、オール電化利用者には現契約の継続を勧めています。回線側の割引も月110円だけです。

au/UQ だけは成立する

意味のある割引が取れるのは au/UQ の自宅セット割だけでした。

対象プラン回線1つあたりの割引
トクトクプラン2 / ミニミニプラン / トクトクプラン1,100円/月
くりこしプランS/M +5G638円/月
くりこしプランL +5G858円/月

最大10回線まで、期間の定めなし。2025年10月にはauでんきのオール電化プランも始まっていて、東京電力エリアに対応しています。単価は東京電力とほぼ同額(夜間27.85円、昼35.75円)です。

携帯キャリアの電気セット割をオール電化住宅の視点で比較した図。ソフトバンク・ワイモバイルは1,100円割引だがオール電化住宅は電気プランに申込不可、ドコモは110円かつオール電化非対応、au/UQは自宅セット割1,100円でオール電化プランあり。楽天は回線割引なし

2回線で年2.6万円の割引になるので、額としては悪くありません。

ここで注意したいのは、この2.6万円とオクトパスの4.6万円を単純に比べられないことです。前者はスマホ代が下がる話、後者は電気代が下がる話で、財布から出ていく先が違います。

比べるべきは「どちらか一方しか選べない」という点です。auでんきの自宅セット割を取るには電気をauでんきにする必要があり、そうするとオクトパスの安い単価は使えません。電気代の削減4.6万円を捨てて通信費の割引2.6万円を取る形になるので、家計全体では2万円ほど損をします。

電気は単価で選び、回線は別で考えるというのが、試算した上での結論です。

なお、回線を他社に乗り換えても電気だけは残せます。auでんきの公式FAQに、回線解約後も電気の継続利用は可能と明記されています。失われるのはセット割だけです。

【詳細】プランを選ぶ前に知っておきたい制度の話

ここからは、どの会社を選ぶかとは別に、知っておくと判断が変わってくる話です。

蓄電池の台数を先に決める

今回の試算は蓄電池7kWh 1台が前提です。ここが変わると結論ごと変わります。

一条施主の実測を集めたところ、蓄電池1台の家と2台の家で、年間買電が大きく違いました。

構成年間買電自給率
太陽光12.7kW+蓄電池7.04kWh(1台)2,962kWh約75%
太陽光13.475kW+蓄電池14kWh(2台)134kWh97.8%

2台の家で年間買電が134kWhまで落ちた実例があります。

ただしこの2件は太陽光の容量も家族構成も違う別の家なので、差のすべてが蓄電池の台数によるものとは言えません。それぞれ1件ずつの事例で、条件を揃えた比較でもない。それでも20倍を超える開きは容量差だけでは説明がつかないので、台数が効いていること自体は読み取れます。

買電がここまで減ると、従量料金の単価差がほとんど効かなくなり、基本料金の勝負になります。プラン選びの重要度そのものが下がる、ということです。

順序としては、蓄電池の台数を決めてからプランを選ぶのが正しい流れです。

オール電化プランを選んだ時点で、燃料費調整の上限は外れる

これは会社選びより手前の、制度上の制約です。東京電力が公式にこう説明しています。

規制料金プラン(従量電灯などの特定小売供給約款にもとづく料金プラン)には、加算される燃料費調整額の変動単価に上限がある一方、当社の自由料金プラン(スタンダードプランや電化上手などの電気需給約款[低圧]にもとづく料金プラン)においては上限がありません

上限があるのは従量電灯B/Cなどの規制料金だけです。規制料金側は、平均燃料価格が129,200円(基準の86,100円の1.5倍)を超えた分は調整しない、という頭打ちがあります。一方でスマートライフS/Lもスタンダードも夜トクも、すべて自由料金なので上限がありません。

どれくらい効くのか。東京電力自身が例を挙げていて、スタンダードS 30A・260kWhのモデルで、2023年1月の電気料金は燃料費調整がない場合と比べて1.4倍程度になったとしています。

オール電化の家は従量電灯を選ぶ意味がほとんどないので、実質的にこの上限は諦めることになります。新電力に移っても同じで、バッテリーオクトパスの定義書にも上限の規定はありません。どの会社を選んでも同じ、という前提で見ておくのがよさそうです。

再エネ賦課金は、どこと契約しても同じ

2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWh(2026年5月検針分〜2027年4月検針分)。これは全社共通なので、プラン選びで変わる部分ではありません。

月400kWh使うと月1,672円、年間で20,064円。電気代のうちこの部分は固定費だと思っておくといいと思います。

安い夜間帯は思ったより短い

東京電力スマートライフの安い時間帯は1時〜6時の5時間だけです。バッテリーオクトパスも同じ区切りです。

蓄電池の容量と充電速度によっては、この5時間に充電が収まりきらない可能性があります。「何kWhを何時間で充電するのか」を先に確認しておかないと、安い枠からはみ出た分を昼の単価で買うことになります。

同じ理由で、エコキュートの沸き上げ時間の設定確認も必要です。会社を変えると深夜時間帯の区切りが変わることがあるので、一条でんきもオクトパスも公式に注意喚起しています。

市場連動型(Looopでんき)を選ばなかった理由

N式の解説では Looopでんき がよく挙がります。基本料金にあたる部分が小さく、自家消費中心の運用と相性がいいとされているためです。

ただし Looop の家庭向け「スマートタイムONE」は30分ごとに市場価格で単価が変わる市場連動型で、公式もリスクを明記しています。

市場が高騰した際(主に夏冬)は、従来の固定単価のプランよりも高くなるリスクもございます

過去に何が起きたかは記録が残っています。2021年1月、電力・ガス取引監視等委員会の報告によれば、スポット市場のコマごとの最高価格が251.00円/kWh、1月13日には1日平均が約154.6円/kWhに達しました。100円/kWhを超えたコマは合計350コマ、うち200円以上が84コマです。

同じ報告書は、市場連動型の契約者について「小売電気料金は高額となった」「事前に十分な情報提供がなかったなどの需要家からの相談が多くあった」とも書いています。

その後の余波も数字が残っています。2022年1月以降に小売電気事業を休止・廃止・解散した新電力は83社(2023年12月31日時点、経済産業省の資料)。契約先そのものが消えるリスクは、実際に起きたことです。

2021年1月のスポット市場高騰を示す図。コマごとの最高価格251.00円/kWh、1月13日の1日平均約154.6円/kWh、100円/kWh超のコマが350コマ。通常時の単価と比べて桁違いに高騰したことがわかる

バッテリーオクトパスは市場連動ではなく固定単価なので、この振れ幅を抱えません。安さと安定のバランスで、こちらを選びました。

なお、当時と今では制度が変わっています。2026年度から補正インバランス料金の上限が200円/kWhから300円/kWhに引き上げられた一方で、直前7日間で200円/kWh以上のコマが累積30コマに達すると翌日から上限100円/kWhに下がる「累積価格閾値制度」が新設されました。ただしこれはインバランス料金の話で、スポット市場の価格そのものに上限がかかっているわけではありません。ここは混同しやすいところです。

おひさまエコキュートを入れるなら「くらし上手」も比較対象になる

東京電力には、太陽光と「おひさまエコキュート」の両方を使う世帯だけが入れる「くらし上手」というプランがあります。

料金の組み立てが独特で、基本料金+120kWhまでの定額料金+120kWh超の従量料金という3階建てです。契約容量6kVAなら基本料金2,654.50円/月+定額3,670.40円/月+超過分30.72円/kWh。

おひさまエコキュートは、深夜ではなく昼間の太陽光でお湯を沸かすタイプの給湯器です。これを採用しない場合は対象外なので、給湯器の仕様を決める打ち合わせの段階で、電力プランまで含めて考えておく必要があります。設備の選択が、あとから選べる電力プランを狭めることがある、という一例です。

新規受付が終わったプランには戻れない

東京電力の「電化上手」は2016年3月31日で新規受付が終わっています。「スマートライフプラン」(実量制のもの)も現在は新規受付停止中です。これから建てる家では、そもそも選べません。

既契約者にとって重要なのは、一度これらのプランから他社に移ると元に戻れないことです。出光の公式書面にも明記されています。新築なら関係のない話ですが、実家の契約などを一緒に見直すときは気をつけたいところです。

電力会社を変えても、FITの売電契約は動かない

ここは安心してよい部分です。

2017年4月施行の改正FIT法以降、FIT電気の買取義務者は一般送配電事業者になりました。小売電気事業者ではありません。埼玉なら東京電力パワーグリッドです。

一方、買う電気の契約相手は自分で選んだ小売電気事業者。東京電力エナジーパートナーと東京電力パワーグリッドは法的分離された別法人なので、小売を乗り換えてもFIT売電契約はそのまま残ります。「売電先も一緒に移るのか、別手続きが必要なのか」という心配そのものが、制度上は発生しません。

分かれてくるのは卒FIT後です。10年経つと国の買取義務から外れて事業者ごとの自由契約になるので、そこで初めて売電先を選ぶことになります。一条でんきの買取契約には「同住所での供給契約が無いと成立しません」という託送約款上の条件があるので、買取だけを単独で契約する場合も、その住所に何らかの供給契約があることが前提です。

ちなみに卒FIT後に何も申し込まないとどうなるか。資源エネルギー庁によれば、余剰電力は一般送配電事業者が無償で引き受けることになります。タダで電気を差し上げる形になるので、買取期間満了の通知(満了の6〜4か月前が目途)が来たら必ず動きたいところです。

新築は「切替」ではなく「新規申込」

新築の時点では供給地点特定番号も検針票もまだ存在しないので、既存契約の切替とは手続きが別物になります。

出光の公式書面も供給開始日を分けて書いています。切替なら申込月または翌月の検針日から、新規入居なら希望した日から。入居日に合わせて供給を始められるので、引き渡し日が決まったら逆算して申し込むことになります。

既築から切り替える場合の所要日数は、資源エネルギー庁によればスマートメーターの交換工事が必要なら約2週間、不要なら約4日です。旧契約先への解約連絡は切替先が代行してくれるので、自分で電話する必要は原則ありません。

スマートメーターは新築なら最初から設置されます。既築で未設置の場合も取替工事は無償で、交換時に15分程度の停電を伴うことがある程度です。

試算の前提と限界

最後に、今回の試算がどこまで信用できるかを書いておきます。

買電量は一条施主が公開している実測値を使いました。ただしろれさんの構成(太陽光13.475kW+蓄電池7kWh 1台)とぴったり同じ実測事例は見つかりませんでした。

項目内容
基準に使った事例東京・太陽光12.7kW+蓄電池7.04kWh・全館床暖房
年間買電2,962kWh(月平均247kWh)
冬(1〜2月)300〜473kWh
夏(7〜8月)233〜293kWh
中間期73〜258kWh

kWh単位で月別の買電量を公開している一条施主は3件しか見つからず、年間の確定値は2件(2,491kWh・2,962kWh)でした。母数が小さいので、代表値としての確度は高くありません。

また、太陽光の容量を増やしても冬の夜間・早朝の買電はほとんど減りません。発電しない時間帯の需要だからです。13.475kWでも2,962kWhから大きくは動かないと見ています。

最も確実なのは、入居後に1〜2か月の実測を取ってから決めることです。オクトパスもLooopも解約金がないので、まず東京電力か一条でんきで始めて、実測を見てから乗り換える手もあります。

一条工務店の施主27世帯の電気代の実績は、一条工務店の電気代は実際いくら?で集計しています。

まとめ

  • ろれさんはバッテリーオクトパスを選ぶつもり。実測ベースで東京電力より年4.6万円安く、夜間比率を50〜80%で振っても順位が変わらなかった
  • 一条でんきと東京電力の電力量料金は完全に同一。差は基本料金の月110円だけ。一条でんきの価値は電気代ではなく卒FIT後の買取単価にある
  • タダ電は2025年9月30日の改定で蓄電池、2026年7月1日の改定で太陽光が対象外になった。約款に明記されているので選択肢から外れる
  • N式を採るなら結論が変わる。とはいえFIT最初の4年は売電24円が高く、自家消費を増やすメリットは小さい。効くのは5年目以降
  • キャリアのセット割は、ソフトバンクとドコモがオール電化非対応。au/UQ の1,100円だけが成立するが、電気をauでんきにする必要があるため、単価の安いプランとは併用できない
  • 蓄電池を2台にすると買電がほぼ消える。プランは蓄電池の台数を決めてから選ぶ

契約したら、実際の請求額と今回の試算がどれくらい合っていたかを記事にします。

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参考にした一次情報

参考にした施主の実測データ

買電量の試算には、以下の一条施主が公開している実測値を使わせていただきました。