一条工務店の見積書を見ると、建物本体工事の欄に「※設計報酬600,000円を含む」と小さく書かれています。

この60万円は、打ち合わせで図面をつくる「基本設計」と、建築確認申請などに使う図面をつくる「実施設計」の対価です。建物本体の金額に含まれているので、別に用意するお金ではありません。

ろれさんは2024年10月に商品を比べ始めてから、2026年4月に「工事着手御承諾書」に署名するまで、何度も見積を出してもらいました。その間、設計報酬は一度も60万円から動いていません。


設計報酬60万円の中身

知りたいことろれさんの場合
金額600,000円(税別)。建物本体工事に含まれ、別払いなし
何の対価か基本設計(打ち合わせで図面をつくる)と実施設計(申請用の詳しい図面)
金額は変わるか商品を比べた頃から最終承認まで、商品や面積が変わっても600,000円
区切り工事着手承諾で基本設計が終わり、実施設計・資材の発注が始まる
工事監理見積書に項目がなく、別料金はかからないと説明を受けた
一条工務店の設計報酬60万円の中身。金額は税別60万円で建物本体工事に含まれ別払いなし。中身は基本設計(配置図・平面図・立面図・仕上げ表)と実施設計(建築確認申請などに使う詳しい図面)の2つ。工事着手承諾で基本設計が終わり、申請書類の作成・資材の発注・構造材の加工が始まる

商品を比べた頃から最終承認まで、ずっと60万円

ろれさんは2024年10月、i-smart II・i-cube III・i-smile II+ の見積を出してもらい、11月からはグラン・スマートで間取りを詰めていきました。ろれさんは坪数を抑えることで、グラン・スマートに手が届きました。2025年2月に施工面積69.97㎡の平屋に決まってからは、最終承認まで面積は変わっていません。どの見積でも、設計報酬の注記は「600,000円」でした。

ろれさんの見積書の設計報酬。2024年10月21日のi-smart II(60.45平米・本体15,890,672円)、i-cube III(60.45平米・14,884,905円)、10月29日のi-smile II+(66.24平米・14,736,280円)、11月15日のグラン・スマート(63.35平米・16,525,227円)、12月23日の2案、2025年1月28日(69.00平米・17,637,297円)、2025年2月から2026年4月までの11通(69.97平米・17,821,708円)。設計報酬はすべて600,000円
見積の日付商品施工面積本体価格(税別)設計報酬
2024年10月21日i-smart II60.45㎡15,890,672円600,000円
2024年10月21日i-cube III60.45㎡14,884,905円600,000円
2024年10月29日i-smile II+66.24㎡14,736,280円600,000円
2024年11月15日グラン・スマート63.35㎡16,525,227円600,000円
2024年12月23日(2案)グラン・スマート62.73㎡/63.76㎡16,433,064円/16,632,178円600,000円
2025年1月28日グラン・スマート69.00㎡17,637,297円600,000円
2025年2月〜2026年4月(最終承認まで)グラン・スマート69.97㎡17,821,708円600,000円

本体価格は商品と面積で約300万円の幅がありますが、設計報酬は60万円のままです。ろれさんの見積の範囲(60㎡台)では、設計報酬は面積に比例せず、1棟あたり定額で本体に組み込まれていました。

ろれさんの家は施工面積69.97㎡の平屋で、60万円は本体価格の約3.4%にあたります。家が小さいほど、本体に占める設計報酬の割合は大きくなります。そのぶん、坪単価は高く出ます。坪単価の内訳は一条工務店の坪単価を見積書で計算した記事で詳しく扱っています。


見積書のどこに設計報酬が書いてあるか

ろれさんの資金計画書では、設計報酬は「建物本体工事」の行に注記として入っていました。設計報酬のほかにも、設計や申請に関わる行が別にあります。

資金計画書で設計報酬が入っている場所。建物本体工事17,821,708円に設計報酬600,000円を含むと注記。建物申請・その他業務284,500円は確認申請・低炭素申請手続及び諸費用264,500円とBELS申請費用20,000円で別の行。預り金精算費用の設計報酬欄は、本体に含まれているためなし
行金額(税別)中身
建物本体工事17,821,708円※設計報酬600,000円を含む
建物申請・その他業務284,500円確認申請・低炭素申請手続及び諸費用264,500円、BELS申請費用20,000円
預り金精算費用の「設計報酬」欄なし本体に含まれているため

基本設計は約15か月。延びても設計報酬は同じ

設計契約の説明では、契約書に標準の日数として、基本設計が約75日、実施設計が90日、合計165日と書かれていると聞きました。ただし施主の建築スケジュールによって大きく変わる数字で、延びても追加の費用はかからないそうです。

ろれさんの場合、2025年1月の初回の打ち合わせから2026年4月の工事着手承諾まで、基本設計の期間は約15か月になりました。土地の手続きに合わせて承諾の時期を決めたためです。一条工務店では、仮契約から1年半以内に着手承諾すれば仮契約のときの坪単価のまま建てられます。2024年10月に仮契約したろれさんは、この1年半をほぼいっぱいまで使いました。

ろれさんの家の設計と工事監理の期間。2025年1月の重要事項説明と初回の打ち合わせから基本設計が始まり約15か月、2026年4月の工事着手承諾で実施設計へ、2026年9月下旬の建築確認(予定)まで。工事監理は着工から2027年2月中旬の引き渡し(予定)まで。設計報酬60万円は期間が延びても同じ
時期できごと設計の段階
2025年1月設計契約の重要事項説明、初回の打ち合わせ基本設計スタート
2026年4月工事着手承諾基本設計が終わり、実施設計へ
2026年9月下旬(2026年5月ごろのスケジュール表の予定)建築確認実施設計の終わり
2026年10月中旬(同上)着工工事監理スタート
2027年2月中旬(同上)引き渡し工事監理の終わり

打ち合わせのペースが月1回ほどになる理由は、こちらの動画と設計士が年間約30組を担当している話で解説しています。

この記事の内容は動画でも解説しています(クリックで再生)

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設計契約の重要事項説明で聞いたこと

設計の打ち合わせの初日、全体のスケジュールの次に受けたのが設計契約(設計・工事監理を引き受ける契約)の重要事項説明です。契約書と説明書がセットになった資料を使い、主な項目をかいつまんで説明してもらいました。

設計契約の重要事項説明でろれさんが聞いた9項目。対象の建物は建物本体だけで外構は別契約、業務は基本設計・実施設計・工事監理、標準の日数はあるが延びても追加費用なし、工事監理は常駐しない重点管理、設計図書は配置図・各階平面図・立面図・仕上げ表・採光の検討、担当の建築士は設計と工事監理で別、報酬は設計60万円(税別)で契約金額に含み上棟金で精算、解除は家づくりの契約と一緒でかかった分だけ設計報酬、再委託なし
項目説明された内容
対象の建物建物本体だけ。外構は別の契約
業務の種類基本設計・実施設計・工事監理
期間と方法標準の日数は基本設計約75日・実施設計90日の合計165日。延びても追加費用なし
工事監理の方法常駐しない「重点管理」
設計図書の種類配置図・各階平面図・立面図・仕上げ表・採光の検討
担当の建築士設計の担当と、工事監理の担当(別の建築士)
報酬と支払時期設計報酬は基本設計分10万円と実施設計分50万円の合計60万円(税別)。契約金額に含まれ、支払いは上棟金に合わせて精算
契約の解除家づくりの契約が解除になると一緒に解除。それまでにかかった分だけ設計報酬が発生
再委託なし。設計も工事監理も一条工務店の社内で行う

設計図書のうち、採光の検討は部屋ごとに必要な光の量を計算した表です。窓がまったくない寝室のような部屋は、法律上つくれません。そのため、打ち合わせで「法律上むずかしい」と言われることがあるかもしれない、という前置きもありました。3Dパースは法律で求められる図面ではないものの、イメージしやすいようにつくってもらえるという説明です。

「仮契約なのに、これは何の契約?」

ろれさんはこのとき仮契約の段階だったので、「本契約とは別の話?」と質問しています。営業さんの答えは、仮契約でも本契約と同じ扱いで進めていて、この書類は誰が責任を持ってこの家を設計するかを示すものだ、というものでした。

背景には、2005年に発覚した構造計算書の偽装問題があります。国はこれを受けて建築士法を改正し、設計や工事監理の契約の前に重要事項を説明することを義務付けました(平成18年法律第114号、2008年11月28日施行)。

設計契約は建築工事請負契約とは別の契約で、ろれさんは打ち合わせ用のタブレットから電子署名で交わしています。署名のあとにメールで届く最後の承認(電子契約を完了させる手続き)が済んでいませんでした。数か月後の打ち合わせで気づき、あらためて手続きしました。電子契約のメールは見逃しやすいので、届いたらすぐ確認しておくのがおすすめです。

解約したときにどれくらい差し引かれるかは、一条工務店の仮契約の記事でまとめています。


工事監理は「常駐しない重点管理」とダブルチェック

工事監理は、工事が図面どおりに進んでいるかを建築士が照らし合わせて確認する仕事です。一条工務店では、設計報酬とは別に工事監理の報酬はかからないと説明を受けました。見積書にも工事監理という項目はありません。

一条工務店の工事監理の体制。設計担当の建築士は打ち合わせで図面をつくり申請まで担当。工事監理の建築士は設計担当とは別で現場の総責任者として図面どおりか確認。現場監督は一条工務店の社員で現場ごとに付き、工事監理の建築士と現場監督でダブルチェック。重点管理の例は基礎のベース配筋で、コンクリートで隠れる前に鉄筋を確認する。引き渡しで工事監理の報告書を受け取る
  • 現場監督が現場にずっといるのではなく、重要なポイントを確実に押さえる「重点管理」
  • 代表例は基礎のベース配筋。コンクリートを流すと中の鉄筋が見えなくなるので、隠れる前に確認する。これは最低限の項目で、それ以外の日も現場監督が現場に足を運ぶ
  • 工事監理の担当は、設計の担当とは別の建築士。現場の総責任者という立ち位置
  • 現場にはさらに一条工務店の社員の現場監督が付くので、現場はダブルチェックになる
  • 工事監理の期間は地盤改良や基礎の着工から引き渡しまで。引き渡しのときに工事監理の報告書を受け取る

現場監督が同時に何棟を担当しているかは、一条工務店の現場に監督がいない理由の記事で一条の採用サイトの数字をもとに紹介しています。


工事着手承諾(最終承認)で決まること

設計報酬の区切りになるのが工事着手承諾です。ろれさんは2026年4月に「工事着手御承諾書」に署名しました(手元では最終見積とあわせて「最終承認書類」として受け取っています)。

工事着手承諾の前と後。承諾で基本設計が終わり実施設計へ、各種申請書類の作成・資材の発注・構造材の加工が始まる。承諾後に変えると確認申請・施工図面の変更、発注した材料の差し戻し、追加費用、工事ミス・工期延長の可能性。例としてキッチンの高さを変えると換気扇の品番・高さ、ダクト経路、外壁パネルの穴の位置まで変わる。承諾後も外構計画の打ち合わせは続けられ、木材の色の個体差、調達難によるメーカー・仕様の一部変更、地中障害物などによる別途費用はありうる

承諾書の冒頭には、承諾をもって各種申請書類の作成、資材の発注、構造材の加工など手配を始めると書かれています。裏面には「本御承諾をもって基本設計を終了し、実施設計に着手します」と書かれています。

承諾後に変更すると何が起きるか

承諾後に内容を変えると、確認申請や施工図面の変更だけでなく、発注した材料の差し戻しや配送・施工計画の見直しが必要になる、と承諾書に書かれています。追加費用がかかるうえに、工事ミスや工期の延長にもつながりやすいそうです。例に挙がっていたのはキッチンの高さです。

キッチンの高さを変えると、換気扇の品番と高さ、ダクトの経路、工場でつくる外壁パネルに開ける換気扇の穴の位置まで変わります。1か所の変更が、関係するすべての箇所と役所の手続きに波及します。承諾書には、不明・不安な点は承諾前に必ず確認してから署名してほしいと下線付きで書かれていました。

承諾のあとでも変わりうること

承諾書には、承諾後でも次のことがありうると書かれています。

  • 木材など自然素材の色の個体差や、生産時期による部材の色違い
  • 社会情勢や市況で部材の調達が難しくなったときの、メーカー・仕様の一部変更(変更時は報告がある)
  • 地盤改良・基礎工事中に地中障害物や既存擁壁の異常などが見つかったときの別途費用
  • 構造上の理由で、スイッチ・コンセント・照明の位置が図面と多少ずれること

一方で、外構計画は承諾のあとも打ち合わせを続けられると設計士から聞いています。

最終仕様確認の打ち合わせで行うこと

承諾の1つ前にあるのが最終仕様確認の打ち合わせです。設計士の説明では、ここはこれまで決めた図面をみんなでチェックする場で、新しく変更を足す場ではないそうです。大きな変更は、そのさらに1つ前の打ち合わせまでに済ませておく流れです。

承諾の時期は早ければよいわけでもないそうです。承諾して工場に発注したあとに、選んだ商品の廃番や新色の発表が出ると、変えたくても変えられません。設計士は、あまりに早い承諾はすすめていないと話していました。

ろれさんも、承諾後の2026年5月にガス衣類乾燥機の乾太くんがオプションに加わり、6月にはカタログが改定されましたが、どちらの新しい仕様も選べませんでした。

承諾までに何を決めきるかは着手承諾までにやることリスト、図面で見る場所は着手承諾前に図面で見る15か所にまとめています。

承諾しても、すぐ着工するわけではない

工事着手承諾は工事の手配を始める合図で、現場の工事が始まる日とは別です。承諾書には、解体・地盤改良・基礎の着工は、署名した資金計画報告書の提出、建築確認の確認済証の交付、借入をする場合は融資証明書の交付がそろってからと書かれていました。ろれさんの家も、4月の承諾から着工予定の10月中旬まで約半年あります。

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【詳細】建築士法で決まっていること

ここからは、設計契約まわりの法律の決まりを細かく見たい方向けです。条文は出典に挙げた e-Gov 法令検索の建築士法・建築士法施行規則のものです。

重要事項説明(建築士法第24条の7)

建築士事務所は、設計や工事監理を引き受ける契約を結ぶ前に、建築士に書面を渡して説明させなければなりません。説明する建築士は免許証を見せる決まりもあります。説明する項目は次のとおりです。

説明する項目根拠
作成する設計図書の種類第24条の7第1項第1号
工事と設計図書の照合の方法、工事監理の状況の報告の方法同第2号
担当する建築士の氏名と、一級・二級・木造の別同第3号
報酬の額と支払の時期同第4号
契約の解除に関する事項同第5号
建築士事務所の名称・所在地、開設者、対象となる建築物の概要、建築士の登録番号、再委託する場合の内容など同第6号、施行規則第22条の2の2・第17条の38

ろれさんが聞いた「対象の建物は本体だけ」「再委託なし」は、施行規則で決まっている項目にあたります。

契約後の書面(建築士法第24条の8)

契約を結んだあとは、上の項目に加えて、設計・工事監理の実施の期間や、種類・内容・方法を書いた書面を渡すことになっています。延べ面積300㎡を超える建物は、契約時に当事者どうしで書面を交わす決まり(第22条の3の3)もありますが、ろれさんの家のような小さな住宅でも、第24条の7の説明と第24条の8の書面は必要です。

工事監理(建築士法第2条第8項・第18条第3項・第20条第3項)

法律上の工事監理は、自分の責任で工事を設計図書と照らし合わせ、そのとおりに実施されているかを確認することです。図面どおりでない工事を見つけたら施工者に指摘して直すよう求め、従わないときは建築主に報告します。工事監理を終えたら、結果を文書で建築主に報告する決まりで、ろれさんが聞いた「引き渡しのときに報告書を渡す」はこれにあたります。


設計報酬と工事着手承諾のまとめ

  • 一条工務店の設計報酬は、ろれさんの見積書では600,000円(税別)。建物本体工事に含まれ、別に払うお金ではない
  • 商品を比べた頃から最終承認まで、商品や面積が変わっても設計報酬は同じ。基本設計が約15か月に延びても変わらなかった
  • 60万円は基本設計と実施設計の対価。工事監理の報酬は別にかからないと説明を受けた
  • 設計契約の前には、建築士法で決まった重要事項説明がある。仮契約の段階でも行われ、営業さんからは設計の責任の所在を示す書類だと説明を受けた
  • 工事着手承諾で基本設計が終わり、申請書類の作成・資材の発注・構造材の加工が始まる。承諾後の変更は追加費用と工期延長につながる

設計報酬は打ち合わせが増えても変わらないので、図面を時間をかけて詰められます。ただし承諾後の変更には追加費用がかかるため、不安な点は承諾の前に解消しておいてください。

なお、ここで紹介した金額と説明は、ろれさんが2024年10月〜2026年4月に受け取った見積書・資料と打ち合わせでの説明によるものです。時期や地域で変わる可能性があるので、最新の内容は担当の営業さん・設計士さんに確認してください。ろれさんはまだ入居前(建築中)のため、工事監理の実際の様子はこれから紹介していきます。

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出典