長期優良住宅に住んでいる人のところには、ある日、市や県からこんなお知らせが届くことがあります。
「認定長期優良住宅の維持保全状況抽出調査の実施について(お知らせ)」
文面には「定期的な点検や修繕等を行うことが法律で定められています」と書かれています。長期優良住宅は、建てたら終わりではないんですよね。
補助金や税の優遇の話ばかりが目に入りやすいのですが、長期優良住宅を選ぶと、引き渡しのあとに30年以上続く義務がついてきます。
この記事では、抽出調査で何をするのか、点検を続けなかったらどうなるのかを、法律の条文と自治体の資料からまとめました。GX志向型の補助金と長期優良住宅のどちらで建てるか迷っている方の判断材料になるように書いています。
- GX志向型と長期優良住宅のどちらで建てるか迷っている人
- 長期優良住宅で建てる予定で、引き渡し後に何をすればいいか知りたい人
- 抽出調査のお知らせが届いて、何を出せばいいか調べている人
まず結論。長期優良住宅を選ぶと、30年の点検と記録がついてくる
| 項目 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| やること | 10年以内ごとに点検し、記録を保存する | 長期優良住宅法 第11条、国交省告示 |
| 確認される | 完成から数年で抽出調査(さいたま市は5〜6年・10〜11年) | 同法 第12条 |
| 怠ると | 罰金30万円以下、改善命令、認定取消し | 同法 第13条・第14条・第21条 |
補助金の額だけを比べると、GX志向型(110万円)のほうが長期優良住宅(75万円)より高くなっています。長期優良住宅は、税の優遇が厚くなる代わりに、この点検と記録の義務を30年以上背負う制度です。
選ぶときは補助金の差額だけでなく、「30年、計画どおりに点検を続けられるか」まで含めて考えておくと、あとで困りません。
ろれさんは長期優良住宅が取れず、GX志向型を選んだ
ろれさんの家は21坪(約69㎡)です。長期優良住宅の戸建ての面積基準は床面積75㎡以上なので、そもそも長期優良住宅の認定が取れません。
そのため補助金はGX志向型一本にしぼり、要件のひとつである高度なエネルギーマネジメントを満たすために、一条工務店のクラウドHEMS(約15万円)を付けてGX志向型を狙うことにしました。
結果として、ろれさんの家には長期優良住宅の点検義務や抽出調査はかかりません。逆に言えば、面積の条件を満たしていて長期優良住宅を選べる人は、この記事で紹介する義務まで含めて比べる必要があります。
GX志向型の補助金は、一条工務店では申請枠の取り合いになった年もありました。枠の事情はみらいエコ住宅2027の記事にまとめています。
長期優良住宅の抽出調査とは
長期優良住宅の認定を出すのは、建てる場所の市や県(所管行政庁)です。抽出調査は、その所管行政庁が「認定した家が、計画どおりに点検されているか」を確かめる仕組みです。
さいたま市の場合、完成予定日から5〜6年、10〜11年たった家からランダムに選んでいます。宮城県は対象のうち1割程度を目安に抽出しています。対象の年数や割合は自治体ごとに違います。
選ばれた家には報告依頼書が郵送で届きます。提出するのは主に次のものです。
| 提出するもの | 中身 |
|---|---|
| 報告書 | 認定番号、維持保全計画の内容、点検の実施状況など |
| 点検記録の写し | 直近だけでなく、計画書に書いた点検すべての記録(世田谷区の案内) |
報告書を書くときには、引き渡しのときに受け取った認定通知書と維持保全計画書を見ながら記入します。この2つは30年以上使う書類なので、点検の記録と一緒にまとめて保管しておきましょう。
ろれさんに紹介をお願いする点検するのは3つの部分。少なくとも10年ごと
点検の対象は法律で決まっていて、次の3つです。
| 点検する部分 | 例 |
|---|---|
| 構造の主要な部分 | 基礎・土台・柱・梁など |
| 雨水の浸入を防ぐ部分 | 屋根・外壁・窓まわりなど |
| 給水・排水の設備 | 給水管・排水管など |
点検の時期は、完成または前回の点検から10年を超えないことが認定の基準です。実際の時期と内容は、認定を申請するときに作る維持保全計画書(30年以上の計画)に書かれています。
もうひとつ見落としやすいのが臨時点検です。大きな地震や台風のあとにも点検と補修をして、記録を残すことが求められています。さいたま市は目安の例として、震度6弱以上の地震や、台風による瓦の飛散・浸水の被害を挙げています。
記録の様式は自由です。点検を頼んだハウスメーカーや工務店の点検報告書を保管しておけば、それが記録になります。
点検やメンテナンスにかかる費用の目安は、一条工務店のメンテナンス費用の記事で整理しています。
点検を続けないとどうなるか。罰金・改善命令・認定取消し
法律では、段階を追って重くなる仕組みになっています。
| こうなると | こうなる | 条文 |
|---|---|---|
| 報告を求められて、出さない・嘘を書く | 30万円以下の罰金 | 第21条 |
| 計画どおりに点検していない | 期限を決めて改善命令 | 第13条 |
| 改善命令に従わない | 認定取消し | 第14条 |
| 認定が取り消された | 補助金や税の優遇の返還を求められることがある | 新潟県の案内 |
いちばん気をつけたいのは最初の段です。罰金の対象は「点検をしなかったこと」ではなく、「報告しないこと・嘘の報告をすること」です。お知らせが届いたら、放っておかずに期限内に出しましょう。
点検が遅れていた場合でも、いきなり取消しになるわけではありません。さいたま市の案内は「調査依頼時に点検を実施していなかった場合は、早急に点検を実施してください。その後に報告書を御提出ください」となっています。書類をなくした場合も、まず建てたハウスメーカーや工務店に復元できるか問い合わせるよう案内されています。
取消しになったときに、住宅ローン減税や固定資産税の減額がさかのぼって取り消されるかどうかは、国税庁や市区町村の資料で確認できませんでした。心配な方は、認定を受けた市や県と、税務署・市区町村の税の窓口に確認してください。
GX志向型と長期優良住宅、補助金はどちらで申請するか
みらいエコ住宅2026事業の新築の補助金は、GX志向型・長期優良住宅・ZEH水準の3つの区分に分かれています。
| 項目 | GX志向型住宅 | 長期優良住宅 |
|---|---|---|
| 2026年度の補助額(5〜8地域) | 110万円 | 75万円 |
| 2026年度の補助額(1〜4地域) | 125万円 | 80万円 |
| 対象の世帯 | すべての世帯 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
| 家の条件 | 断熱等級6以上、一次エネルギー消費量の削減、HEMSなど | 着工前に認定を申請する、床面積75㎡以上など |
| 引き渡し後 | 長期優良の点検義務はない(認定を取らない場合) | 30年以上の点検・記録、抽出調査の対象 |
| 2027年度(概算要求) | 100万円(5〜8地域、暫定) | 未公表 |
長期優良住宅の補助金を受けるには、着工前に所管行政庁へ認定を申請しておく必要があります。着工してから申請しても、補助金の「長期優良住宅」の対象にはなりません(みらいエコ住宅2026事業のよくある質問より)。
補助金の額だけならGX志向型のほうが上です。それでも長期優良住宅を選ぶ人がいるのは、GX志向型には追加の設備費用がかかることと、申請の枠が取れないことがあるからです。
なお、長期優良住宅の認定そのものは、補助金とは別に所管行政庁で取る制度です。補助金の区分とは別に、認定を取るかどうかで税の優遇と点検の義務が変わります。
ろれさんに紹介をお願いする長期優良住宅の認定で厚くなる税の優遇
点検の義務と引き換えに受けられるのが、税の優遇です。GX志向型の性能の家でも、長期優良住宅の認定を取らなければ、税の区分は「ZEH水準の住宅」になります。
| 税の優遇 | 認定長期優良住宅 | ZEH水準の住宅(認定なし) |
|---|---|---|
| 住宅ローン減税の借入限度額 | 4,500万円(子育て・若者夫婦 5,000万円) | 3,500万円(同 4,500万円) |
| 固定資産税を2分の1にする期間 | 5年間 | 3年間 |
| 不動産取得税の控除額 | 1,300万円 | 1,200万円 |
| 登録免許税(保存登記) | 0.1% | 0.15% |
住宅ローン減税の差が効くのは、年末の借入残高が3,500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円)を超えている年だけです。借入額がそこまで大きくなければ、ローン減税では差が出ません。
自分の借入額で差がいくらになるかを計算してから、30年の点検義務と比べてみてください。
【詳細】長期優良住宅法の条文と自治体の運用
ここからは、根拠を確かめたい方向けの細かい情報です。
条文の要点
長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20年法律第87号)の該当部分です。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第2条第3項 | 「維持保全」は、構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分・給排水設備を点検または調査し、必要に応じて修繕・改良すること |
| 第6条第1項第5号 | 維持保全の期間が30年以上であることが認定の基準 |
| 第11条第1項 | 認定を受けた人は、建築と維持保全の状況に関する記録を作成し、保存しなければならない |
| 第12条 | 所管行政庁は、認定を受けた人に維持保全の状況の報告を求めることができる |
| 第13条第1項 | 計画どおりに維持保全をしていないと認めるときは、期限を決めて改善に必要な措置を命じることができる |
| 第14条第1項 | 改善命令に違反したときは、認定を取り消すことができる |
| 第21条 | 第12条の報告をしない、または虚偽の報告をしたときは、30万円以下の罰金 |
点検の頻度は、国土交通省の告示(平成21年国土交通省告示第209号)で「建築の完了又は直近の点検、修繕若しくは改良から10年を超えないもの」と定められています。
保存しておく記録
埼玉県の案内では、作成・保存する記録として次のものが挙げられています。電子データでの保存もできます。
- 長期優良住宅建築等計画(住宅の位置・構造・規模、維持保全の方法と期間、資金計画)
- 認定通知書、変更があった場合の変更認定通知書
- 相続や売買で引き継いだ場合の承認の書類
- 所管行政庁から報告を求められた・命令や指導を受けた場合の内容
- 設計図書
- 実施した点検・補修の内容(日付、内容、委託した場合は委託先と報告書)
相続・売却するとき
家を相続したり売ったりして認定を受けた人が変わるときは、所管行政庁の承認が必要です(第10条)。承認を受けないまま持ち主が変わると、抽出調査のときに報告できる人がいなくなってしまいます。
面積の基準
戸建ての長期優良住宅は、床面積の合計が75㎡以上で、少なくとも1つの階の床面積が40㎡以上(階段部分を除く)であることが基準です。所管行政庁が地域の実情に応じて別の基準を定めることもあるので、建てる場所の基準を確認してください。
まとめ。長期優良住宅は「30年続く約束」として選ぶ
- 長期優良住宅は、10年以内ごとの点検と記録の保存が法律で義務になっている
- 完成から数年たつと、市や県が家を抽出して点検の実施状況を確認する
- 報告しないと罰金30万円以下。点検していないと改善命令、従わないと認定取消し
- 補助金はGX志向型のほうが高く、長期優良住宅は税の優遇が厚い
- 長期優良住宅を選ぶなら、認定通知書と維持保全計画書を保管し、点検の記録を残し続ける
ろれさんは面積の条件で長期優良住宅が取れず、GX志向型を選びました。長期優良住宅を選べる方は、補助金の差額と税の優遇に加えて、30年続く点検と記録まで含めて決めてみてください。
ろれさんに紹介をお願いする